□現代ファンタジー
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「さあさあお買い得だよ!」
「今日もいいの揃ってるよ!」

活気のある街。
一見、普通の街。
だけど、そこかしこにいるのは…闇の人間。
それが普通に街に溶け込んで、何も言わない。

「…お腹…空いた…」

ここはいい空気だ。
良い街だ。

「…表と裏がハッキリしてるのに、混在してて面白いな。」

普通一つの街に裏の組織がウヨウヨいない。
普通、一つの街に裏の組織が堂々と幾つも存在しない。
普通…裏の組織が表に出て何も無い事は、ない。

「面白いなぁ……お腹…空いたな…」

故郷に帰りたくて。
でも故郷なんて知らないから、宛もなくやってきた。
無一文。
まぁ今までしっかり食べれた事なんてないけど。

「…ん?」

ふと、目の前に子供がいた。

「おねえちゃん、まいご?」
「迷子、かなぁ…」

家は多分もう無い。
家族ももう居ない。
私は何を、したかったのかな。

「…」
「わぁ、おっきなむしさん。」
「まぁねぇ。」

本当に面白い。

「おう、陽向。どうし………ここらで見ない顔だな?」

ああ、本当に面白い。

「おじさん…ここ、面白い所だね?」
「あん?そんな面白みある街か?」
「うん。白と黒が混ざって灰色だ。なのに白と黒はハッキリ分かる。」
「…おめぇ…」
「ここなら…故郷がどんなものか見つかるかなぁ……うーん…その前に山に行って食事かな…」
「パパ!おねえちゃんおっきいむしさんいるの!」
「あぁ?おっきい虫?」

あーーーー…

「…流石に……一週間食わずは無理だったか…」
「は………ちっ…おい、嬢ちゃん。」
「?」
「こっち来い。今なら特別に嫁さんの超美味い飯を食わしてやるよ!」
「…はい?」

これが始まりだった。
胡散臭い髭のメガネおじさんに連れてこられたのは…アパート?

「おう、帰ったぜ!」
「あらぁお帰りなさ……あなた…」
「ちげーわ!腹減ってるって言うから…陽向がよ…」
「ママー!」
「お帰り陽向。」

白と黒…

「おじさん、裏の人だよね。」
「まーな。」
「………」
「…」
「良かったね、ママに似て。」
「やかましいわ!!!」
「あらあら。さ、上がってちょうだい。」

こうして、無理やりな感じで上げられた家。
出てきたオムライス。

「…美味しい…」
「だろぉ?」
「でしょぉ?」
「ふふっほらほら二人とも。ついてるわよ。」
「む…」
「う…」

温かい。
小さくても、豪華じゃなくても。
温かい。
ご飯食べて幼児の相手。
何故かそこまでして。
膝で寝てしまった幼児の温かさが、余計に…

「…家族、だねぇ…」
「あ、あーー…なんだ、おめぇ行くとこあんのか?」
「行くとこ?」
「なんつーか…その…」
「無いよ。行くとこなんてない。生まれた所なんて覚えてないもん。」
「あ?」
「ただ…日本人は…日本が…故郷でしょ。」
「…。」

例えもう帰る場所がなくても…

「そうかい…」

陽向ちゃんはお昼寝。
私はここにいれない。

「おじさんありがと。初めてオムライス美味しいの食べた。」
「お、おう…」

今日の寝るとこ探さなきゃね。
おじさんの家から出て、街を歩いた。

「変な街。まるで何かを迎え撃つつもりみたい。」

普通に見える家。
およそ一般日本家屋なのに、まるで撃たれても良いよう作られたみたいな。
普通の街なのに。
何かが違う。

大きな公園で、ついウトウトとしてしまった。
ふと、目が覚めた時。
周りに、死体?

「子供!?」
「なんで今の時間に出てんだ!?」
「?」

なんだ?

「お前、どこの組のもんだ?」
「?」
「知らねぇ、か。なら…」
「ま、待ってくれ!」

ん?

「おじさん?」
「コイツは違う。」
「松風組のジンか。違うとは?」
「その、だな…」
「………?…こいつ…」

目の前に転がる死体。
の、一つ。
見覚えのあるソイツ。

「コイツら、クメルト?」
「「「「っ!!!」」」」
「お前…知ってるのか?」
「んー…半年前まで戦って…おかしいな…アイツら全員皆殺しにしたはずなのに…」
「っ!」
「やっぱりお前裏の組織の…」
「もう、違う。…纏ってる服が違う…これ…見た事ない…」
「…。おい、ジン。」
「は、はい!」
「その子供は一旦お前に預ける。組長達に話を通すぞ。」
「…はい。」

一体ここで何が起きてるんだ?
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