時の園

□ポケモン
1ページ/79ページ

「では、今日から研修生がくるので、宜しくお願いしますね。霧澤さん。」
「え、嫌です。」
「はい、無理です。」

はい、私霧澤水華です。
介護士…つまりヘルパーです。
今出勤したんですけど、着替えてもないこの時に(タイムカード押したところ)研修生の指導を命じられました。
嫌です。

「じゃあ、着替えてもう一度事務所ね。」
「えー…」
「文句は聞きませんよ。はい、行った行った。」

おのれ施設長の鬼め。
勿論更衣室での話題は研修生の話し。

「聞いたら四十代の男の人やって。」
「えー…(鳥さんみたいな人なら良いけど…)」
「なんでもヘルパーの講座の人と社長が知り合いなんやって。」
「ウチじゃなくて他の施設でもええやんー…しかもウチが指導って…」

指導って嫌いなんですよね。

「そうそう、なんかこれを機に東京にも施設作るらしいで?」
「マジですか。」
「しかも社宅まで。」
「マジですか!!」
「家賃天引きらしいでー。」
「…(面倒くさくなくていいかも。)」

それはもう、一人暮らしは面倒くさいの一言ですよ。
まぁ気楽でいいですけど。

◇◇◇

「おはよー。」
「おはよー。あの研修生来てるで。」
「おうっ」
「(
コソッ)禿げたおっさんや。」
「うぇー…」

あ、でもでも、鳥さんみたいな人なら良いけど!!

「頑張れ。」
「ひ、他人事の様に…」
「あのー…」
「はい!!」
「申し送りしますよー。」

あ、そっちか。
控え目な声だったからてっきり研修生の人かと思ってしまったよ。

「敬語損した。」
「えぇ!?」

◇◇◇

「で、こちらが本日から研修を受けられる方です。ええと、それでこちらが指導をしてくれる、霧澤さんです。」
「霧澤です。宜しくお願いします。」
「あ、えと、鳥海浩輔です。宜しくお願いします。」
「!?」
「宜しくお願いします。」

ん?
聞き間違い?

「じゃー、本日も宜しくお願いします!」

で、皆もう業務に取り掛かっちゃうと。

「え、えーと…と、鳥海さん…?」
「あ、はい。」
「…じゃ、じゃあ…えーと…」

しまった!!
頭が真っ白で何するか分かんないぞ!!

「(はっそうだ!こういう時の為のマニュアルだよ!)…えーと…まずはシーツ交換ですね。普通の…じゃ無かった…まずは人の寝ていないベッドの整頓、それから…寝たきり…はうちにいないから…こちらは、後の体位交換の時に説明だけしますね。」
「はい。」

…なんで鳥海浩輔さんがここにいて私の目の前にいるんだー!!
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ