□転生令嬢
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今、馬車に乗っている。
領地に帰るのだ。

「レティ。」
「なぁに?」
「しばらく冒険者活動は休止だ。」

なんですと!?

「なんで!?」
「デビュタントの年齢が18から15に引き下げられた。その為、デビュタントに向けた準備をせねばならん。」

なんですって!?

「なんで!?」
「他国との差を無くす為だ。そもそも平民は15ならば働いている。上に国交のある国々が15が成人なのだ。」

まぁ…そうか…
冒険者なんて10歳だしな…
準備かぁ…

「まぁお前が考えた数々の物、しかと使ってもらおうと領地の民達がこぞって色々と屋敷に届けているそうでな。」

わぉ。

「しかも…また民が増えたらしい。村の人口が増え、幾つか統合し街としてもまだ村を作らねばならんそうでな。しばらく私も領地を見るために留まる。」
「そっか。」

領地を賜り、領地に引きこもった我が家。
その時は領主館のある所に村…だけだったのが、今じゃ大都市になるほどにまで人が流れて、そしてまだ流れている。
そんなお祖父様、精力的になりすぎて社交界から一家で遠ざかってるのに功績挙げすぎで男爵位から一気に公爵位まで叙爵を何度もされている。
お父様が継ぐ予定の物も、その他にも。
こう見えてわたくしだって領地の産業を幾つか考えてるのが評価されてるし、何より冒険者一家だ。
冒険者との軋轢も少なくし、名だたる国の中で最も冒険者が「活動しやすい国」が我が国。
お祖父様やお父様が冒険者活動を通して感じた事等を纏めて国に通したから、法整備も今は落ち着いている。
依頼の信用問題というのはこの法律があるから出てくるのだ。
冒険者だけでなく、依頼する方にも罰則がある。
今頃、アマル亭は役人がやって来て大わらわだろう。
ちなみに冒険者活動の為の法律整備が出来たのは一重に我が国がわりと広くダンジョン指定されている所も多いからだ。
必ず各領地にはダンジョンの入り口が一つはあり、魔物を溢れさせない為には冒険者をどんどん呼び込む必要がある。
うちの領地も三つほどある。

「仕方ないけど…ハレトーノに行くつもりだったのになぁ…」
「港町にか?」
「うん、良く依頼一緒にする冒険者仲間がいるんだけど、今度一緒に行こって誘われてたんだよね。…仕方ない…」

手紙送っとこ。
でもなんで港町限定だったんだろ?
私生活良く分からない代表だしな。

「誘われていたなら早めに手紙を出しておきなさい。」
「はい。」

今はまだ、将来の事とかそんなの漠然としていて分からない。
それは転生しても一緒なんだな。

「…ごめんね、グリー。また今度誘ってね。」

飛んでいく手紙を見ながら、突然やってきた「成人」を前にこれからどうするかなんて悩むしかなかった。
成人を迎えればやって来るのは「婚活」だからだ。
そこは、貴族だからね。

◇◇◇

「は?成人の年齢が引き下げられる、だぁ?」
「そうなんだよぉ…」

な、なんですって!?

「我が家では成人の規定に掛かるのはグリーとセネルディオとマイラスだ。デビュタントの準備があるからしばらく家にいなさい。」
「そんな…」

マズイ、マズイわ!
そうとは知らずアタシ、レティを依頼一緒にする約束しちゃったじゃないの!

「レティ…って、確か冒険者のか?」
「前に船に乗ってみたいって言ってたから丁度いいかと思って………なによ。」
「いやー、お前が自分から、なぁ…しかも女だろ?」

だから何よ。
アタシはグリセルド。
オネェキャラはあくまでキャラよ。
心はちゃんと男よ。

「新興とはいえ我が家も貴族。出ないわけにはいかん。」

パパンは大きな商会を作った。
まぁ…ちょっと家庭事情ってやつは普通じゃないけど。
皆和気あいあいとした家族よ。

「…ん?なにこれ、手紙?」

そこには家の事情で冒険者稼業がしばらく出来なくなったと書かれていた。
あの子字も綺麗ねぇ…

四年前、13歳になった年に冒険者登録をした少女。
珍しいとは思ったわ。
なんせ銀髪ですもの。
だけど…なんというか人との距離が微妙に空いてる子。
ソロで活動する子ってどこかそういう所がある。
まぁアタシも人の事言えないけど。

「まさかとは思うが…お前そのままで出る気じゃ…」
「当たり前デショ。アタシがアタシらしいカッコして何が悪いのよ。」
「…お前な…」

子供の頃、アタシはとても臆病者だったわ。
父親の血筋と母親の血筋、どちらも色濃く継いだアタシはどっちにも慣れなかった。
そんなアタシに母の親戚…どころか父親の親戚は皆オモチャにしてくれたわね。
そして、出会ったのよ。
そう、化粧に。
化粧をして、女口調にした途端、それまで無かった世界が開けた。
いつの間にか自信もついたわ。
とはいえ化粧を落とすと本来の自分が出ちゃうから、人前に出る時程落ちないメイクをするわね。
母親の血筋はとある部族。
褐色の肌に彫りの深い顔、そして緑の髪が特徴。
そして両親の血筋は男は皆体つきがごつくなる。
父親の血筋は海に生きる亜人の血筋だから、早くから船に乗ることを覚えた。
10歳の時の誕生日プレゼントは帆船だったわ。
海に出る。
その為だけに冒険者登録した。
今ではAランク冒険者だわ。
元々は商会の支部に荷物を届ける為に渡されたのだと知った時は怒ったケドね。
まぁ今じゃ一端の船長でもあるわ。

「…船に乗せても良いって思ったのはレティだけねぇ…」

とりあえずめんどくさい貴族の方の行事を終わらせてしまいましょ。
終わらせなきゃ、レティを船に招待出来ないしね。
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