仮
□異世界転生
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「食堂って夜中でも開いてるんだ?」
「研究する人が多いからでしょ。」
あと厨房を回してるのがゴーレムだからってのはあるかもね。
「ここでブレスレットを見せるの。」
「ん…」
「ってしたらメニューが浮かぶからその中から選ぶ。」
「ね、値段書いてるよ?」
「それは外で食べるならこの値段になるってのを教えてるだけ。学食はタダよ。来客者も使うし、教諭の半数が魔塔所属だし、教諭も使うからよ。」
「ふぇー…」
「あっちが教諭用のテーブル。一等格寮室はここ。」
「先に座るの?」
「マナーレッスンでもあるのよ。」
先に座って、待つ。
出来たら侍従ゴーレムがやってきて皿をテーブルの自分の前に置く。
カトラリーも必要な物を置いてくれる。
「このナフキンを膝に掛けて、こっちはこう持って…」
「う、う…」
「基本は音を立てない。まあ今日初めてだから多少は良いよ。」
「む、難しいね…音なんて気にした事無かった…」
「これから魔塔の魔術師だから他国に任務で行かされる時とかもある。平民が使うような所は気にしなくていいんだけど、貴族相手ならマナーなってないと笑ってくるから。」
貴族なんてどこも一緒なんだね。
貴族っていうか、金持ちは、かな。
「力を入れすぎないのよ。それでも切れないなってなったら、魔力操作で切れ味良くするの。」
「…こう?」
「そうそう。嫌らしい所ならわざと切れないカトラリー出してくる馬鹿もいるからね。」
「うえ…」
「あんたは聖女を発現させてる。他国の聖女が無理な事を押し付けてくる阿呆な国もあるかもしれないからね。その時に教養と知識は自分を助けてくれる友になる。…ずっと私が付いてられる訳じゃなくなってくるからね。」
「…うん…」
大人になれば道は別れていく。
そろそろアスタナも私がいなくても歩けるようにならなきゃ。
「っ!!美味しい!」
「ま、一等格なら当たり前よねー。」
「カイルはどこかな?」
「良くて四等格の所じゃないかな。平民の推薦者だし。町で大きな顔出来てきたけど、これからはそうじゃない。カイルより強く賢い魔術師は沢山いる。そこに気づけるかどうかがカイルの今後を左右するわね。」
「…そっか。」
ステーキ美味しかったー。
魔物は確かに危険な存在だ。
だが、強い魔物程美味しい。
「…まぁ、うちのモモちゃんより劣る肉だけどまあまあね。」
「た、確かに…」
「愛情込めて育ててるからねぇ。」
ちなみにゴーレムが厨房をやってるのは午後八時から。
人件費削減と学生の研究のフォローを両立させた自立稼働式ゴーレムは素晴らしい発明だわ。
食べたし帰ろ。
浴場は寮の1階だったわね。
戻ると。
「ああ、漸く帰ってきたね。」
「「?」」
金髪碧眼でまるで王子様みたいな人ね…
「初めまして。三学年生で寮監のアイル・シルベスターだ。レティシア・クロノワールさん、アスタナ・オルドーさん、だね?」
「はい。」
「はっはい!」
「詳しい寮の説明は…明日にするとして。」
「…あ。すみません。明日の朝は…」
「うん?」
「あ…あたしのせいでレティの封印解けなかったんだよね…」
「別にあんたのせいじゃないわよ。思わず…全員で楽しんで消滅魔術書を探したのが原因だし…」
めっちゃ楽しんでしまった。
おじい様も半分位から「宝物探ししている気分じゃのぉ。」とか言い出したから余計に…
「…まぁ検索魔術の精度が上がったと納得はしてるわ…」
「あはは…」
「ああ、それなら問題はないよ。俺も兄に呼ばれているからね。」
兄?
あ。
「ジルベールさんの、弟?」
「そう。」
「え!?」
「ジルベール・シルベスター。シルベスター家の次期当主で……主に後始末係。」
「あは、は…」
「後始末って?」
「おじい様の部屋に入った時、従兄達の輝かしい功績の書類を見つけた。その事後報告書も見つけた。殆どがジルベールさんの署名だった。」
あれ見た時に中々黒い笑顔で「まぁ、流石総帥閣下のご家族で」って言ってた事からおじい様もある程度やらかす部類に入ると思われる。
「まぁ、その後始末係の補佐をになってるのが、実は俺だったりするんだ。…学院内では壊さないでくれると有り難い、かな…?」
「ひぃっ!!ががっ頑張ります!!」
「まぁ絶対的破壊者と聖女という珍しい資質だと言うことからある程度は覚悟してるよ。」
「うっ…すみません…」
「謝る事はないさ。…」
「私は修復魔術使えるし。」
「それは有難いねぇ。皆様方は修復魔術という小技すら覚えて下さらなくてね…」
そうだと思った。
「お父さんが最初に教えてくれた魔術だし。」
「そういえば昔一生懸命教えてくれたね。」
「回復術使えるようになればあんたも使えるようになるわよ。多分絶対的破壊者の方が前に出てて他の魔術まで使えなかったんだろうし。」
「っ!!」
「そうだね。その辺りに関しても俺が面倒を見るように言われているんだ。漸く来た後輩だからね。」
漸く?
「まさか、先輩も治癒術士?」
「そう。父が治癒術士なんだ。学術院ではね、一学年の殆どの授業が応用だったりする。」
「応用…?」
「つまり、戦う力の育成だよ。勿論そうじゃない学生もいるよ。」
戦闘訓練授業が確かに多い。
だが、学術院だからこそ、高等魔術や難しいレシピを置いている。
要は復習からの応用という訳か。
とはいえ占術科とか回復科とかは中等科までは無いからな。
大半が戦闘技術科に行くだろう。
そして新しい攻撃魔術を覚えるなり今までの持つ魔術の精度を高めるのだ。
「とにかく、寮や学院に関する事は明日ね。まずは…お風呂に入ってベッドに潜る事だ。」
「ふぁい!!」
アスタナ…もう眠くなってるの?
「レティが三人…」
「んなわけないでしょ。パジャマ取りに行くわよ。」
「ふぁい…」
全く…アスタナはいつまでも子供ね。