□異世界転生
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アスタナの為に初級の回復術と破壊…消滅魔術を探して教えてる間に夜になってしまった。
一応寮に入ると外でご飯食べる時は申請書を書かなきゃいけない。
その為、晩餐はまた今度にして寮に来た。
まぁあと一週間は猶予があるけどね。
ちなみに寮は全て一人部屋。

「…」
「あれ?寮ってもう少し…なんというか…こじんまりした部屋じゃないの?」
「…中央学術院は貴族が通う事が多いから、わりと広めではあるみたい。」

寮の説明書を改めて読んだ。

「ただ、殆どの貴族もそうだけど、学術院卒業前に塔に所属する為の試験がある。それまでに塔に所属してるならば所属してる塔の格によって部屋の広さが変わる。うちの塔一等格の魔塔だからこうなる。」
「ふぇぇ…」

そして一等格の魔塔所属なら。

「食堂の席と食事もそれなりになる。食事の時のマナーは塔所属になったら教わらなきゃいけないから自動的に組み込まれる筈よ。」
「は、はい!!ちゃんと出来るかな…」
「大丈夫よ。細かい所の注意点は私が教えてあげるから。破壊者って消滅魔術しか使えないから、練習も考えてしなさいよ。」
「うん。部屋、隣なんだね。」
「そうね。じゃ、制服に着替えて食堂行きましょ。」
「うん。」

部屋の鍵というのは存在しない。
というのも、魔術師であるからこそ、研究は人に見られたくないものだからだ。
故に鍵というのはなく、魔道具なのだ。
ブレスレット。
しかもこれは部屋の格で違う。
購買と食堂ではこれが必要。
これを見せる事で買える物が違うのだ。
三年間、成績で格も上がったり下がったりする。
ここは塔所属者の為の寮。
無所属の寮は別の所。
入る時にちらほら灯りが付いている部屋があったから何人かはいるみたいだね。

「…さて、と。まずは…」

取り出すのはグリモワール。
どんな魔術が入っているか気になるところだが。

「グリモワールは所有者の「力量」に合わせ魔術が増えるようにエデンが死ぬ前に書き換えて保存した。私の今の力量は…」

わりと沢山あるわね。

「なるほど、薬と錬金術のレシピも出る……あ!探してたマナ回復薬にマナ回復の装備レシピ!!…うげ…素材が半端なく取りに行くの面倒…お、ようやく見付けたわね。私の属性の魔術。」

稀少価値の高いスキルや称号の固有魔術は閲覧出来る所が決まっている。
が、更に閲覧制限が高いのが、各属性魔術書だ。
特にアスタナの破壊、私も使える回復術、そして私が持つ最も希少な属性…

「空間魔術書…お父さんは魔塔にすらないと言っていた…良かった…」

アスタナにはああは言ったけど、実際の所本当に得意なのは結界術だ。
なんせ、生まれたばかりの頃にお父さんが確認しただけでも三つ以上の属性持ちは稀少価値がある。
私は生まれた時から水、風、土、木、氷、雷…そして発現が1%未満の空間属性。
家を破壊したのは、生まれたばかりの頃は魔力が高すぎて空間魔法が勝手に発現していたからだ。
限定した空間内の物を消滅させる事が出来る。

「…有り難く、学び使わせてもらいます。ご先祖さま。」

そう、この空間属性。
血継なのだ。
クロノワールの始祖は魔導国家創立者エデン。
故に毎度ではないけれど何度も総帥を輩出している家門になる。
エデン・クロノワール。
お父さんが聞かせてくれた始祖の昔話は全部本当のものばかり。
特に迫害されていた魔術師を纏めた話しは印象に残っている。
もう滅んだ国。
エデンが滅ぼしたその国は魔術を殊の外嫌っていた。
その王家に五番目に生まれたのがエデンだった。
幼少から蔑まれていたエデンは魔術の素質を開花させた。
だが、そんな事になれば殺される。
そして隠したまま世界を旅し、そして魔術師の現状が良くないと知る。
仲間を集めて、独立しようとしていた時に裏切りにあって国から軍を向けられてしまう。
それに憤ったエデンは隠れていた為弱体化していた魔術師達を庇って一人戦う。
その時に持っていたのが、このグリモワールなのだ。
それから各地を転々とし、ようやくこの地にしたのは、魔導国家があるここは実は魔力を多く持つ大地だったからだ。
以降二百年は魔導国家の名を知らしめると共に閉鎖していた。
そして世間が魔術師を認めだした時、開国したのだ。
それからは魔術師が迫害される事は少なくなった…というものだ。
エデンの装備品は「資質あるもの」に継承出来るよう保管されているとは聞いていた。
その資質というのがまた特殊。
誰にも知られていない、いや、知る事すらないもの。
誰もグリモワールの1ページ目は読めないとされてきた。
それを読めるならエデンが認める資質持ちだとも。
確かにそうかもね。

『グリモワールを手にした我が後継よ。何も怖がる事はない。楽しく、この世界を満喫するといい。俺がそうしたように、な。その為に杖とリングと、そしてこのグリモワールを遺しておく。』
「日本語、ねぇ…その資質が転生者なんてそれこそ万揃えても見つかるか分からない資質よね。」

他は特にこの世界でも変わったものはない。
本当に世界中の物が記されている。
とはいえ1000年前のものだけどね。

「うん、私なりに楽しむよ。おじいちゃん。」

グリモワールの冒頭部分とも言えるところはただの日記だ。
転生して、意識が戻った時から書いていたようだ。
必要な部分や見たいものは勝手に開くようになっているから、他に見られる心配はない。
そうだ。

「…今日、推薦書を貰って中央に来た…」

私も付けよう。
私が死んだ後、手に取る「後継」の為に。
日記なんて小学校の夏休みの宿題以来だな。
感じた事、考えた事、これまでの事。
そしてこれからの事も書いていこう。
私が生きた証でもあるのだから。
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