□転生令嬢
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ドレスを着替えて廊下を歩いている。
と。

「ちょっと。なんで伯爵家の者がここに居るのよ。」
「立場ってものを分かってないのかしら。」

ま、いるよね、こういう人。

「分かっておられないのはあなた方では?失礼。わたくし「従姉」に会いに来ただけですので。」
「なっ…」
「なんですって!?」

馬鹿ねぇ…わりと有名だとはお兄様から聞いてたのにな。

「リリィ姉様!!」
「あら、わたくしの可愛いレティ。随分待っていてよ?どこで道草を食っていたのかしら?」
「ん?んー…目の前の廊下?」

ちら、と見ると有り得ない物を見ている顔ね。

「聞いたわよ。魔塔の試験に合格したのですって?」
「うん!ゴールドランクに昇級よ!」
「まあまあお二方。立ち話もなんですからお座りになっては?お茶をお淹れ致しますわね。」
「ありがとナーニャ!…」
「はわ!!わっわたしもお手伝いします!!」
「しかと見ておきなさい。」
「はい!!」

やっぱりまだ資格の無いメイドだったか。

「ちょっと。わたくしの部屋に招待したのは可愛い従妹だけよ。いつまでわたくしの部屋を覗いてるの?躾のなっていない者達ね。…レティ、帝国のお菓子を取り寄せたのよ。」
「おお!チョコレート!伯父様に禁止されてから一口も出来てなかったのよねー…」
「それはあなたが一人で買い占めるからでしょう?」

お母様はこの隣国である帝国の出身。
だから良く帝国の物は送られてくる。

「見て見て、最近帝国じゃこういうレースのつけ襟が流行ってるんだって。おばあ様と伯母様が送ってくれたの。」
「あら。通りでとても細かくて繊細なタッチだと思ったのよ。これは…最高級のモス絹ね?」
「うん。今年もとても良く繁殖したって。」

リリィ姉様は城の侍女の他に五人も連れてきている。
まぁ唯一の公女様だしね。

「叔母様はお元気?」
「うん。この前サロンが爆発してたけど、ベルト兄様が泣きながら直してたね。」
「それはベルトの悪い癖だからね。…で、どう?」
「ん?」
「わたくしの敵になりそうな者はいた?」
「あー…どうも王太子殿下狙いの子は一人。コーデリアって呼ばれてたね。」
「第一司法大臣の所の子ね…」
「慰問訪問を全面アピールしてたね。」
「いかにも狙ってますってのが気に入らないわね!」
「気に入らなくてもお前が相手なのは変わらんのだろう?何故こんなにも引き伸ばすんだ…」
「あら!可愛いレティを見てやらなくてはなりませんもの!」
「王太子殿下にご挨拶…」
「構わん。」

流石氷とまで言われる人だね。
ていうかカーテンの後ろから出てきたけど?

「ああ、バルコニーで繋がってるのよ。見てごらんなさいよ。既に侍女では無い者を無理やり侍女にして付けてるじゃない。」

ナーニャの扱きが凄くて半泣きね。

「別に気にしてないけど。」
「あなたはね!…侍女いる生活じゃないから出来るけど!」
「いや、伯母様に鍛えられたし。」
「そうね!お母様が侍女として動けるように仕込んでいたけど!!仕方ないわ、ナーニャ。このままレティについて。仮にもクロフォード公爵家分家のクロノワール伯爵家がこんな扱いされていてはダメよ!」
「かしこまりました。」
「別に良いんだけど…こうなる事見越してお祖母様が一人送ってくれたらしいし…」
「は?おばあ様?どちらの?」
「ん?だから「お母様のお母様」の事だよ?」
「っ!?…そう…流石ね…ていうか本当に国交とか頭に入ってない令嬢が多すぎ。クロノワール伯爵家の令嬢…というかレティに何かあったら帝国との関係にヒビが入るじゃないの…」
「そうだな。まぁそれを我が弟共も理解しているか疑問だがな。あいつらは目先の情報に囚われがちだからな…まぁ俺はリリィがいればそれで良いがな。今日はわりとすぐ知れる薬師の点を陛下も持ち上げていたな。」
「そですね。」
「一瞬で質疑が終わって笑いそうだったがな。」

あ、だから一人ぎこちなかったのですか?

「吹き出すのを堪えたからな。」
「あら。エディがそうなるなんてよっぽどなのね。」
「ああ。」

氷の王太子殿下って誰が言ったんでしょうね。
こんなにも穏やかで良く笑ってるのに。

「レティはこれからどうするの?」
「んー…とりあえずは図書室に行かせてもらおうかと。そもそもわたくしが望んでここに来た訳ではありませんし。」
「お前は本当に図書室が好きだな。昔も図書室から出ようとしなかったからな。」
「…?………あっ!」
「思い出したか?」
「あら、お知り合いでしたの?」
「昔、図書室で本を山積みにしていた3歳児がいたものでな。」
「だって…」
「あらあら。まぁレティはどこに行っても変わらないわね。」

確かにあの頃一度来た。
これきりと思って最大限本を読み漁っていたわね。
その時に見目麗しいお兄さんが面白そうに笑って一緒に読んでたっけ。

「ああ、あの頃なら第二王子殿下とそっくりですね?」
「まぁ見た目はほぼ同じか。」
「へぇ。」
「あ、誰も居なければお義兄様って呼んでも良いですか?」
「ああ。…そうだ。リリィが言っていた冒険者になった従妹とはお前か?」
「ん?あ、はいそうですね?そんな事話したの?」
「だって冒険者でもソロで魔術師なんてレティ位でしょう?」
「そうだけど…丸っきりの魔術師じゃないけどね…」
「そうなのか?」
「はい。一応弓と格闘が出来ます。大大前提が魔術師ってだけで。昨今丸っきり魔術師もひと握りですよ。魔塔でも大叔父様に…腹の立つ天才様三人位ですよ。」
「ほう。」
「言ってた子たちね。今どきそういう人いるのねぇ。」
「腹の立つ天才様ですけどね!…まぁそれはお父様もか。」
「ふふっあっさり輝石ランクにおなりになられたものね。」
「苦労してようやくゴールドなのに…」
「レティは登録に行った時点ではシルバーだったそうですのよ。」
「それはそれで凄いな。」
「魔力量と魔法の精度だったかしら?」
「うん。うちの兄弟姉妹全員シルバーからだけどね。」
「あの時は中々話題になったものだ。」

この後も楽しくお茶会しました。
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