内緒の時間

□仮
3ページ/5ページ

さてさて、やる気出たのは良いけど締め切り迄には書き終わらないと行けない。
時間掛かるんだよ、レナール君は。
なんせ…

「ふっ…英文長ぇぜ…」

そう、全部英語だからだ。
とは言え別にそれは問題ない。
なんせ小6までアメリカに住んでたからね。
なんで日本にって?
え、日本の方がご飯美味しいじゃん。
というか昔は日本とこっちを行き来する生活だったから気に入ってる日本にいる事にした、かな。
と、インターホン。

「はい?」
『招来軒です。ラーメンセットお持ちしましたー。』
「はーい、開けるんで入ってきてくださーい。」

ん?今の東雲君じゃ…

「ちわーっす…って霧澤!?」
「やっぱり東雲君。」
「…ここお前ん家かよ…」
「私は自分の印税で暮らしてるの。」
「あ、そう…ほら、ラーメンと唐揚げ、あんかけチャーハンお待ち。」
「ん!!晩御飯!!」
「…他に人は…」
「いる訳ないよ。皆別々に暮らしてるんだから。」
「マジかよ……これ何。」
「何って今執筆してる小説。」
「…全部英語か?」
「初稿はアメリカだったもん。」
「へー…そういやお前英語と国語の成績良かったよな。」
「まぁねん。いや、大変なんだよ?日本の学校で教える英語ってアメリカのと違うから。」
「そうなのか?」
「うん。文法おかしい時があるよ。」
「…っていうか晩飯作れよ…」
「締め切り迫って無けりゃ作るわよ。こちとら社長の無茶振りが酷いもんでね…」
「目が遠いわ。…締め切り近いと作れねぇのか?」
「まぁね…校閲で返された時には…ふっ…」
「お、おう…」

あれは地獄だったな。
とは言えこれは返っては来ないのは分かってる。

「なんでだよ。」
「アメリカの校閲は緩いから。」
「そんな理由かよ…」

とは言え書き上げねば!

「まぁ頑張れよ。毎度ありー。」
「はーい。」

こうしてると普通なんだよねー、東雲君。


それからしばらくして。
コンビニに行った帰り。

「…ちょっと、大丈夫?」
「霧澤…これくらい大丈夫だ。」

道端で倒れてる東雲君に遭遇した。
喧嘩?

「親父の借金取りだよ。あのクソ野郎…ヤクザから借りやがって…」

おお…ん?でもそれ東雲君には関係ないんじゃ?

「ねえな。おふくろと離婚して俺はおふくろに引き取られてるからな。ヤクザにゃそれは関係ねぇんだろ。」

あらー…複雑だったのねー…

「とりあえず、傷の手当て位はしよ?来て。」
「あ、おい!?」

と東雲君を引きずってたら。

「…やだ、こっちにも。」
「あ?…秋吉?」
「…」

まぁ睨まれてる。

「今日はけが人続出の予報でも出てたのかしらね。大丈夫?」
「これくらいなんて事ないよ。」
「まぁ折れて無さそうだしね。でも、はい秋吉君も来て。」
「は?」
「手当て。なに、そんなカッコで街をうろつく訳?」
「………随分無様な姿だね、東雲。」
「うるっせぇよ。てめぇよかマシだろ。また男いる女に手ぇ出したのかよ。」
「あっちから言いよってきて、あっちから勝手に殴ってきただけだし。」
「そうかよ。」

結局殴られてたら世話ないわよね。

「「…」」

結局家に連れてきた。
もう病院も閉まってるしね。

「へぇ、綺麗な所に住んでるね。」
「印税がっぽりですから!…確定申告もがっぽりだけど…」
「流石売れてる作家さんは違うね。」
「まーねー。」

この辺に応急処置セット置いてた…あったあった。

「お前だって売れっ子モデルさんだろ?」
「まぁねー。」

そういやモデルしてたって言ってたっけ。
周りの女共が。

「はい、これで良し。」
「手馴れてるね?」
「まぁ昔はお父さん手当てするのに良くやってたからね。」
「手当て?父親を?」
「そー。すーぐアクションしたがるんだから…あ、お兄ちゃんもか。」

お母さんは論外。

「論外?」
「そもそもお母さん警察官だもの。犯人取り押さえるのに腕折るなんてしょっちゅうだったし…」
「警察官とかすげぇじゃねぇか。」
「まぁ、そうかもね。」

今頃どこで何をしてるやら。

「?一緒に住んでないの?」
「住んでないね。そもそもお母さんが今どこかなんて知らないし。」
「それ…」
「世界中の犯罪を暴く!!とか言ってインターポールに転職しちゃったもんだから任務だとどこにいるか分からないのよねー。先月は多分パリにいた。」
「「…」」
「そもそもお父さんもアメリカだし?お兄ちゃんは日本にいるけど会ってやらないし。」
「いや会ってやれよ。」
「会わん。私は執筆に忙しい。」
「?」
「知らないの?紫藤果菜苺先生のお兄さんは今人気急上昇中の俳優霧澤大地だって。」
「…マジ?」
「え?人気急上昇?誰が?お兄ちゃんが?」
「ディスってあげないでよ。シスコン気味で嫌がられてるって本当なんだ?」
「お兄ちゃんがカッコイイ瞬間なんて皆無でしょ。」

あんなド変態。

「ド変態…なのか?」
「妹の着替えとか風呂とか寝顔を盗撮するようなのはド変態とは言わないかしら。」
「「…ああ、そう…」」

さて。
と、鳴り響く腹の音。
今日はしっかりご飯食べたからね。
私じゃない。

「何、腹ぺこなの?」
「そういうお前も鳴ってるだろうが。」

二人共が腹ぺこなのね。
仕方ないから作ってあげるわよ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ