内緒の時間

□仮
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さてさて。
映画化決定!ではないので。
休日はお仕事ですよ。

「…」

最近お気に入りのカフェ。
静かでコーヒーや紅茶のお代わりができる上長時間居てもOKなお店。
なんというか老舗喫茶店ならではの雰囲気が………

「考えたらここも親父の行きつけだな。」
「仕方ないさ。家族で良く来てくれてたんだからな。はいよ、カフェオレ。」
「ありがとマスター。」

私の行きつけ、というのは父親の影響が大きい。
現在日本にゃいねぇが。

『迫り来る悪を挫け!全米が震撼したスパイアクションを見逃すな!6月放映決定!』
「けっ…」
「こらこら。」

何を隠そう、親父はハリウッド映画で活躍する日本人として有名なのだ。
世界の空真希。
それが我が父の芸名だ。
本名は霧澤真希ね。
私はその長女である。
お兄ちゃんはお父さんを…

『…と、来月お父様の映画が放映決定しましたね。』
『大丈夫。親父に負けません。いつか片足でプチッと踏んずけてやるのが夢ですから。』
「また言ってるよ…」
「ははは。昔から言ってるなぁ。」
『そう言えば、妹である紫藤果菜苺先生の作品も映画化されるそうですね?』
『え、なにそれ俺知らない!今すぐ妹に電話するんでこれで…』
『『いや駄目だから。』』

拒否っとこ。

「で、その紫藤果菜苺先生はどうなんだい?」
「んー…次の作品に取り掛からねば!親父と兄貴は出させてやらねぇファンタジー続編を書くのだ!」
「お、遂にかい?」
「アメリカから催促来た。」
「壮大だねぇ。」

ファンタジーは基本的にアメリカの出版社から出してます。
ミステリーとかサスペンスは日本ね。

「お、噂をすれば。」
『レナール、12歳。夏の終わりに、彼はまた一つ大人になる。Stand Up!シリーズ四作目、待望の映画化!』
「おう、そういや映画撮り始めるって言ってたな。…夏休みにハリウッドに行かねば…」
「この家族は壮大だねぇ。」

ふむ。
しかし原作はそろそろ佳境にさしかからねば!
主人公レナールをそろそろ大人にしてやらねばな!

「ああ、いらっしゃい。」
「…っ!…」
「空いてる席へどうぞ。」

今回はー…
ん?なにやら視線を感じますが?
顔を上げたら。

向かいの席に…

何故君も私の生活圏内に現れた秋吉悠真君…

「やあ霧澤さん。何してるの?」
「静かな環境でパソコンを弄っているだけだけど?」
「へぇ?」
「…水華ちゃん。米田君が泣きそうな顔でそこに立ってるけど?」
「へ?っ!?米田さん!?」
「居たよ水華ちゃーーーん!」

物凄いスピードで入ってきてコーヒー頼んで目の前に座ったぞ。
たまにこの人が分からんよ米田君。

「どうしたんですか?もしかして校閲引っかかりました?」
「(校閲?って出版社とかの仕事じゃ無かったっけ…)」
「いえいえ!あれは即行出版決定しましたから大丈夫ですよ。いえいえ!それよりも!朗報というか悲報というか!」
「うっその流れは聞きたくない…聞きたくない無いですぞ米田君…」
「いえいえ!聞いてください!水華ちゃん、実はネットの方でじわじわと過去作品が人気出てきているのは知っていますか?」
「ああ、ラノベとかのコミックス化が熱いよね。ラノベ系はネットサイトですぐアップ出来るから…って私もそこで拾われた口だけど…」
「ええ。で。はい社長から。」
「うええー…私は今からレナールを大人にしようとしてたのにー?」
「ええ、ですからその後でも構わないと言質と書類は頂いてます。ええ、それはね。という訳で紫藤果菜苺先生。お仕事です。」
「えーーーー…何書くのー…」
「(紫藤果菜苺…って!?)」
「ファンタジーコミックス向きの小説…つまりラノベです。」

えーーーーー!

「なにそれ楽しそう!なら早い所レナール君を大人にするわ!」
「はい!じゃ!僕は次の先生の所に行ってきますんで!ご馳走様でした!」
「はいよー。相変わらず慌ただしい人だねぇ。」

やる気出た。
んで…秋吉君は何故こっちを凝視してるんですかね?
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