多重能力

□一
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「はぁっはぁっ!」
「湧いて出てきよるのぉ…」
「くそっなんだよコイツら!」
「…うん、泥人形だね。」
「ドロォ!?」
「…大地の魔法を感じるよ。」
「そこまで分かるんですかい?」
「まーね。私は…まぁ自然の力は大体持ってるから。さてと、これが4戦目。もう少し粘って頂戴。」
「おう!」
「まだまだ行けらぁ!!」

息の上がる二人に、息一つ乱さぬ少女。
殆どを二人が倒しているというのもあるが、勿論少女も戦ってない訳ではない。

「(あれだけ動いていて息一つ乱さぬとは…)」
「(マジかよ…まだ能力も、武器すら使ってねえってのに…)」

戦いながらも二人は徐々に先程の少女の言葉を信じ始めていた。

◇◇◇

「…すげぇ…それにあの二人の武器は…」

その言葉と共に男は自らの愛刀を見やった。
と、その時だ。

「やぁ、浩輔君。」
「っ…」
「あぁ、そんな顔をしないでくれたまえ。君にとっては朗報を伝えに来たのだよ。」
「…」
「君の仲間達はどうやら助かった様だよ。まさか水晶の森の近くまで来ていたとは。いやはや、運はいいねぇ?」
「…」
「だがしかし本当に運が良かったのかね?」
「…何?」
「水晶の森の民は余所者を嫌うと
聞いているよ。入って来た者を問答無用で攻撃するとか。しかも民衆でさえ強い魔法を扱う種族だ。生きていたら、良いがね?」
「っ!?」

先程、男…浩輔に条件を突きつけていた男はニヤリと笑ったまま去っていく。
浩輔は先程の少女の言葉を思い出す。
表情はまだ迷ってはいる。
だが、確かめなければという思いで、浩輔は再びステージへと足を進めた。
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