多重能力

□一
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「父さん…」
「お兄ちゃん…」
「…」

出場を果たした三人の頭上に檻に囚われた三人。
その内一人は老人だった。

「ウムゥ…まさかとは思うたが自ら出るとは…はぁ…あのお転婆め…」

老人の視線の先にはあの少女。

「そういやさっきあの兄ちゃんに何言ったんだ?」
「彼等ならもうすぐ無事という事と、その気なら私達と共闘しない?って。」
「信じるか?ここにいる連中は他人を信じる事を徐々に忘れる…信じられなくなんだ…」
「確かにね。けど戦局は私達が4連勝した時に分かる。」
「「?」」
「ま、やれば分かるわ。」

そう言うと少女はまた老人を見た。
一方の老人も何やら感じた様だ。

「お嬢さん、坊や。安心せい。無事にここから出れるぞい。」
「え?」
「おじいちゃんなんで分かるの?」
「ん?うむ。一番強いのが来たからのぉ。それはそれとして…二人にこれを渡しとこうかね。」
「これは…宝石の…球?」
「ボクには短剣?」
「あの二人はお前さん達の身内じゃろ?」
「え、ええ。兄です。」
「うん。お父さん。」
「あの二人が持つのはそれと同じ物で出来ておる。あの二人がそれぞれの武器を使えたのならばお前達も使える筈じゃ。」
「でもあた
し戦いなんて…」
「見りゃ分かるぞい。それは少し時間は掛かるが持った人間の素質を見抜き見合った武器を作る…不完全じゃがの。」
「不完全…なんですか?」
「うむ。やはりそういった精製は職人でなければ荒削りになってしまう。荒削りのままでは威力も落ちるわい。じゃがこの後大いに助けられる道具となろう。…それはそうとあのお転婆め。まさか共の一人も付けずに来たのではあるまいなっ」

既に老人が見下ろした下では戦闘が始まっていた。
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