多重能力

□一
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一週間後。
少女の元を訪れたのは少女を止めようとした男二人だった。

「使えた?」
「なんだこの武器は…」
「紙すら斬れねえ…なのに慣れてくりゃ岩も簡単に…」
「訳あって私はあるクソジジイと戦士と職人を探してる。あなた達は戦士として「合格」。」
「合格…だと?」
「そう。それは特殊な水晶で出来た武器。扱えるのならそれは「水晶の森」に入る資格があると言うこと。」
「!?水晶の森だと!?あの結界で護られた国か!?」
「馬鹿な…オレたちはなんの関係も…」
「そんなの私も分かんないよ。とりあえずそこを勉強してる最中にあのジジイが…はぁ…」
「お前…一体何者だ?」

男の問いに少女は小さく笑う。

「それに答えたら一緒に来てくれる?」

ただ、その声音はどこか楽しげであったという。

◇◇◇

歓声渦巻く闘技場内。
そのステージに立つのは水晶の刀を下げた若い男。
険しい表情で見つめる先にはスクリーンが。
そこには何者かの追撃を受ける、男と同じ水晶の武器を持つ者達。

『さあ、若き長よ。お前がここで勝ち続けなければお前の仲間はどんどんあの世へ行くぞ?一度負ければ追っ手は10人、勝てば10人引き上げさせる。簡単だろう。』
「(容易く…言ってくれる!)」

男が構えた先には、この闘技場の住人であり屈強の戦士達だ。

既に4戦目、この試合に勝てば一旦の休息が設けられる。
その間は追っ手も追撃をやめるらしい。

「(皆…頼む逃げ切ってくれ!!)」

雄叫びと共に男は戦士達に斬りかかった。


◇◇◇

「アイツが一番ひでえな…」
「…あそこは…」
「どうしたんですか?」
「画面の向こうの彼等ならもうすぐ無事よ。」
「え?」
「…水晶の森が近い…彼等なら結界には入れる筈よ。」
「あの近くに…」
「…もうすぐ終わる。準備は良い?」
「あぁ、勿論でさぁ。」
「いつでも行けるぜ!」

あの二人を従えた少女は試合に出るべく控えていた。
木箱の一番高い場所に座る少女は気負いもせず、果物を口に運んでいる。

「今助けに行くからな…」
「待ってろっ…」
「…」

戦う光りが瞳に宿った二人を見て少女は小さく笑った。
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