多重能力

□一
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「ここらの水は綺麗なんだ…」

偶然見つけた湖にて、浮遊し楽しんでいた水華。

「…」

その姿を木の上の枝に座っている男が見ていた。

「…あ、魚。…コイツ食べれる魚…じゃ無いわな。」

湖に泳ぐ水晶の魚に最も俗物的な感想を漏らす水華。
力を発現させるまで普通一般人として生きてきた水華。
まだその感覚を失う程、女王として生きてはいない。
と言うよりもそもそも姫と呼ばれ城に半軟禁生活もまだ三ヶ月と少し。
家族や友人とすら会えない日常は、暇を持て余すにはあまりある現実だった。

「…鳥も…蝶も…皆水晶が混じってる…」

色とりどりな水晶の生き物が視界を過る。
その度に水華は自分のした事、これ程までの大規模な生態変化を自分の力が起こしたのだと認識する。
唯一変わらぬものがあるならば風だろう。
だがそれさえも水華はその思い一つで動かせてしまう。

「植物も所々水晶が混じってるし…」

街は比較的普通だが、城はまさにお伽噺から飛び出した様な様相。
不思議な事に水晶であるにも関わらず中は見えない。

「…一人は流石に寂しいな…」

湖より突き出た水晶に腰掛け、手を水に浸す。
だがそれで何が満たされる事もなく、溜め息一つ
水華は立ち上がろうとした。
その時だ。
大きく水面が揺らぐ。

「!?」
「っ!」
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