□転生令嬢
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宣言通り図書室で過ごしてますレティシアです。
やっぱりというか、まぁ人は少ないよね。

「ふぅむ…やっぱり魔塔より魔術系統は少ない…けど植生に関しては大分増えたわね。」

と、目の前に人。
見ると令嬢。
集められた中の一人。

「あなた、どういうおつもり?」
「はい?」
「殿下方に近付こうとしないなんて…なんの為にここに来てるの?」
「わたくしはただ父に連れられて来ただけです。そもそも父はわたくしを候補に挙げることを拒否していました。ですからわたくしも積極的にアプローチはしません。」
「だとしても!!お茶会に誘われたなら出るべきでしょう!!」

図書室でうるさいなぁ。

「お言葉ですが。」
「っ!」
「何故、宮中伯家たる我が家が懇意にしたいとも思わない家格のお茶会に出なくてはならないのです?あなた方と懇意になった所で益もないのに。」
「っ!!!」
「わたくし、辺境伯家と宮中伯家を「ただの伯爵家」と侮る輩とは懇意にしない事にしておりますの。ちゃんと、役職の重要性を覚えてから、序列を学んでからお誘い下さるかしら。そうでなくとも、我がクロノワールはクロフォード公爵家の属家であり傍系。当主様や御一家が気に入らない方と仲良くなれという方が間違っているのよ。失礼しますわ。」

昨今の頭痛い問題として、領主でない貴族は辺境を預かる家柄と宮中内部職を軽んじる傾向にある。
辺境の家柄は勿論魔物や敵国とのせめぎ合いで必要だし、宮中職は陛下へ進言「してもいい」役職なのだ。
本来大臣達の声を纏めて陛下に忠告したり意見するのが宮中貴族の役目。
どれだけの貴族が蔑ろにしてるのか…
宮中伯家の一つとして嘆かわしいわ。

「…お見事。」
「いたの、カイル。ていうかなんであなたここに居るの?」
「親父が素晴らしい医師のお陰で元気100倍なもんでな。溜まりに溜まった陳情書を持ってきたんだ。」

ああ、それで。
カイル・ベレントーレ公爵令息。
辺境公ベレントーレの次期当主だ。

「相変わらずの山ね。」
「お前は相変わらずチビだな。ちゃんと食ってるか?」
「14歳の娘の標準よ!!」

ま、まぁ…確かにちょっと小さい方だけど!
気さくで人当たりは良い。
加えて兄貴肌で、野性味あるイケメン代表だ。
先日婚約者を迎えたとか?

「ああ。この後デートだ。」
「失礼な事しないのよ?あんたデリカシーが本当にないんだから。」
「お前な…」
「カイル様?」
「アデリーン。」

お、結構大人しそうな…薄幸美女って感じ!!

「こんな粗野な男で苦労してませんか?デリカシーの欠片も無いような…」
「お前はどっちの味方だ。」
「そんなのクマに嫁がされる方の味方に決まってるわ!!公爵様はスマートなのに!!」
「親父はばあ様似だからな!俺はじい様似になっただけだ!」
「ふっ…ふふっ…」
「アデリーン…」
「だって…クスクスっ」

笑った!

「お初にお目に掛かりますわ。アデリーン・リストナと申します。お義父様を治して下さったというのがこんな可愛らしいご令嬢だなんて。」
「可愛いか?」
「なんですって!?」
「可愛らしいではありませんか。」

おっとりしつつもしっかりした方みたいだね。

「ところでなんでお前王城にいるんだ?」
「王子殿下方の相手候補だもの。」
「は!?…ああ、だからさっき…」
「あの言葉は全ての辺境に座する一族にとって嬉しいものですわ。ありがとうございます。」
「お礼を言われる程ではありませんわ。本当の事ですし。陛下や王太子殿下は何より辺境を護る家柄を大事にしたい意向であると聞いておりますもの。」
「アデリーンは南の辺境候家の出なんだ。」
「まぁ!!暖かい所から寒い所へなんて…」
「いえ、大丈夫ですわ。南側の生まれなのにわたくし氷属性しか持っておりませんの。暑くて堪らなかったのでとても嬉しいんですわ。」

なんと。
ん?最近よく聞く氷姫って…

「アデリーンだ。氷雪龍を宥めてくれてな。我が家にとっても嬉しい逸材だ。」
「ありがとうございますわ。」
「はぁー、良くあの頑固者を宥められましたねぇ。」
「あら?グラキオスと面識が?」
「ええ。ご当主を治療するにあたり…」
「…」
「ちょっとうるさかったのでぶっ飛ばしました。」
「あら…」
「コイツ、わりと気に入らねぇもんぶっ飛ばす傾向だからな。」

うるさいわねー…

「ていうかあの時はグラキオスのせいでああなったんだから仕方ないじゃない。」
「ドラゴンに見事なアッパーだったな。」
「アッ…パー?」
「下から上に殴りあげる格闘技だ。剣術でもあるな。主に顎の下に入れる。」
「とても入れやすい位置にいましたもので。」
「まぁ。」
「良からぬ事をやれば何時でも呼んで下さい!」
「ふふっありがとう。」

まぁカイルのお相手にしちゃ良い人過ぎるわね!

「なんだと?」
「ふふっそれではそろそろ。」
「そうだな。じゃあまたな。」
「ええ。」

これであの寒々しいレグレント城も暖かい場所になるわね。

「とはいえ図書室を出ちゃったから暇ね。…そういえばちゃんと出仕してるんだったか。一回は会っとかないと後でうるさそうね。よし、今日は騎士団の見学に行こう!」

騎士団は図書室から見て反対側か。
いい暇つぶしよね。
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