□異世界転生
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「あら、今日はメリッサが連れてきたの?」
「ええ。遅番なので。迎えは弟が来る予定です。」
「はい。」

一応城はシフト勤務。
有事の時は変わるらしいが、基本的に皆時間はバラバラだ。

「…あぁ、朝は父か上の妹が多くなるかと思います。」
「上の…ああ、確かクラウス酒場に勤めてるんだったかしら。」
「ええ。」
「分かったわ。」

ちなみにお母さん以下城勤め組は結構朝早い。
その代わり、お父さんとアネッサお姉ちゃんはやや遅め。
動き出すのが遅い平民側の仕事だからだ。
特にアネッサお姉ちゃんは食堂兼酒場なので早くてお父さんと同じ位である。
まぁ夜番昼番とあるみたいだけどね。

そして私はなんと!
今朝新しい歯が生えてきていた!
これで計五本目。
中々順調である。

「ねーねっ」
「ふふっ良い子にしてるのよ?」
「あいっ!」

メリッサお姉ちゃんはとてもかっこいい。
貴族と言われても遜色ない立ち居振る舞いである。
実際養子にと何度も勧誘が来ていたらしい。
が、そこはメリッサお姉ちゃん。
誰に何を言われても頷く事はなかった。
鉄の女である。

さて。
今日も退屈なサロンだ。
今日の楽しみは…

「はぁい皆ー。今日は楽器を触ってみましょう!」
「早くない?」
「何事も早目早目よ!それこそ一歳児が見事に弾けたら天賦の才があるって事でしょ!」
「そうだけど…」
「うちの子は惨敗だったのよ…せめて将来楽しみな子を教えないとやってらんないわよ!」
「なんか凄い熱意ね…?」
「…クリクス男爵家って嫁の対応が雑らしいわよ…ほら、あちらの夫人が先代男爵の夫人なのよ…」
「…もしかしてそれでチャリティー参加率が高いの?」
「そうなんじゃない?」

貴族といえどそういうのはあるんだねぇ…
とりあえずやはりやりたいのは弦楽器だよね!
子供用のだから小さい。
しかも今日は他の同じ一・二歳グループも一緒だ。

ヴァイオリンはー…

「だうーっ」
「ガンガンしないのよぉっ」

全部取られたな。
しばらく待ってるとハープだけが取り残された。
…まぁ残り物には福があるっていうし。
あちらでは早速大騒ぎであるが。

お、もしかしてこれ念力(魔力で物を動かす)の練習になるんじゃ?
とりあえずまずは指で。
うーん、やっぱり指の力が弱いから音が出ないね。
ならやはり魔法だ。

一個ずつ音を確認して。
ていうかこのハープ小さいくせに弦多くない?
ピアノみたいな音階出たよ…

とりあえず弾くのは…ええと…

「…え?」
「音、楽?」
「うそっ」
「あれ、グランデンハープよね?子供用の…」
「ダメ元で置いた奴ね…」
「ーーーーーーっ!!!天賦の才よ!!天才よぉ!!」
「あ、でも手を使ってないわよ?」
「無属性の魔法よ。一歳であんなに魔法を使うなんて…」

うむ、多分間違えてるがヴィヴァルディの春を弾ききった!
後ろを振り返ると…

「っ!?」

キラキラしてる夫人達の後ろになんか男の人。

「ぴやーーーーーーっ!!!」
「「「「「っ!!?」」」」」
「って、あら?サストーネ子爵様?」

ぬ?子爵とな?

「先程心地よい音を聞いて…それにしてもこちらの子は…平民?」
「はい。王太子宮侍女筆頭のメリッサの妹さんですわ。」
「へぇ…彼女もフルートの腕前が素晴らしい。楽団に来てくれなかった…」

しくしくしてる…

「というか、今は何を?」
「早目に楽器に触れさせれば良いかと思いまして。」
「うちで全く誰も使わなかった子供用の楽器を寄贈させて頂きましたの。」
「そ、そう……一瞬で表情が…」
「子爵様、クリクス男爵夫人と前男爵夫人ですわ…」
「あー…なるほど…熱心な夫人がいるのに…やっぱり残念な血筋なんだねぇ…」
「彼女の他にもここに居る大半の夫人は夫や自身の子に期待出来ない人が多いのですわ…まぁそうでない夫人も多いですけれど。」
「…、そのようだね。それにしても魔法で弾くとは中々賢い子だね。そうだ!この子に楽器一通りプレゼントしてあげよう!そうだねぇ…君と君も良かったねぇ。」

気前いいお兄さんだね。

「いずれこの子達が将来楽団に入る事を願うよ…」
「…また団員が逃げたらしいですわよ…」
「厳しいのは当たり前でなくて?宮廷楽士団ですのに…」
「ねぇ?」

大人って色々と大変なのは世界が違っても同じなんだねぇ…
とりあえず楽器は有難く頂いておこう!

そしてお昼ご飯の後お昼寝をして、今日はなんと宰相府にお散歩。
すっっっごい本棚。
これ全部国全体の領地とか諸々の確認書類なの?

「レティ、何見てんの?」
「れ。」
「あそこの棚は50年前の施政の記録だなぁ。」
「っち。」
「あそこは250年前の施政の記録だなぁ。」
「っ!!!」
「我が国は今年で建国500年なんだよ。世間じゃ強大国の部類なんだねぇ。」
「ほーーーーーっ!…れっ!」
「それは他所の国の書簡だよ。国が違うと書簡の物すら違うんだよねぇ。凄いよねぇ土地柄って。」
「「「「いやいやいや?」」」」
「ほう。一歳でこういったものに興味を示すか。」
「そうですねぇ。兄はもっと走り回って欲しいみたいですけどね。」

だれこのおじさん。

「閣下もお孫さんがお生まれになったとか?」
「うむ。そろそろ一歳、この子達とは同じ歳となるな。ふむ…預ければ孫に会いやすいか?」
「いやいやいや…高位貴族なんですから…警備の面で許可降りないでしょう…」
「ふむぅ…」
「…閣下。申し訳ございませんが、陛下との戦闘のお時間ですよ。」
「もうそんな時間か…まだまだ子供に癒されていたいのぉ。」
「「「閣下…事務官の殆どが追い出されていますので…」」」
「あのクソ陛下め……ほう。どうだ?付いてくるか?」
「自分が、ですか?」
「うむ。君の妹と一緒にな。」
「え?は、はぁ…」

ラルトお兄ちゃんにちょいちょいとされる。
これはお兄ちゃん登りの合図!!

「ん。」
「「「「ぶふぅっ」」」」
「…、夫人方。妹が離れないのでしばらくしたらまたサロンへ連れていきます。」
「あらまぁ…大丈夫ですの?宰相府のお仕事に支障が…」
「構わんよ。必死にしがみついているのに離すのも忍びない。というか、まぁそもそもまだ一歳。母親や家族恋しい時期だろう?その位の融通はサロンを作る時に覚悟しておるよ。」
「かしこまりました…」

よじよじしててもお兄ちゃん歩くから凄いと思う。
そして実はこのお兄ちゃん登り。
わりと良いスキルになりそうな気がする。
何より体力作りの練習になる!

動いてても背中目指すぜ!!
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