アイドル

□SolidS
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「…」

ここから。
落ちれば楽になるのか。
分からない。
だが、今よりマシになるなら飛び降りたい。

「おい。」
「…?」
「まさか…自殺でもする気か?」
「…別に…」

だけど。
この日、ここに立ってなかったら。
そう思う。

「…命を投げ出す位なら。」
「…」
「俺の所に来い。」

最初、この人は何を言っているのかと思った。
だけど、不器用な事しか言えないこの人は。
この時は私が自殺しないように、必死に頭を動かしたらしい。
そう思うと笑える。

そう思えたのも、全部この人のお陰だったから。



「車内販売です。何かご入用の物はありませんかー?」
「(なんで、私この人についてしかも新幹線乗ってんだろ…)」
「…コーヒー、飲むか?」
「え…あ、はい…」
「コーヒー二つで。」
「はい。」

渡されたコーヒー。
しまった…ブラックは飲めない…

「…名前、いいか?」
「…霧澤、水華…です…」
「ふむ。歳は…高校生か?」
「まぁ…」
「荷物は…」
「何も。」
「…」
「何も…ありません…私にそんな価値はないと…」
「価
値があるかどうかは、他人ではなく自分が決める。」
「…そんなの…分かりません…」

だって…昔から…

「っ…」
「まぁ、何が自分にあるかは、やってみなくては分からん。」
「はぁ…」

静かで、的確な人…
でもどこか見た事あるのは…気のせいなのだろうか。

私、どうなるんだろう…
まぁホームレスよりマシだろうと思いたい。
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