IS〜銀の軌跡

□episode 7
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「だとしてもだ、こいつを仕向けてきた奴の仲間には違いないってことだろ?」




「ん〜、色々とこちらにも事情があるんだが、まあそういうことになるかな」




「ちょっと、あまり余計なことを喋らないで」




「いいじゃないかこれくらい。ケチケチするな。
さて、そろそろそこをどいてくれないか?」




自分たちの前に立ち塞がる一夏に視線を向けるノネット



「断る!」



言い放つ一夏の隣に鈴も並ぶ




「確かに、これだけ好き放題やられて、はいそうですかって帰すわけにはいかないわよね」




一夏は雪片を鈴は双天牙月をそれぞれ構える



「無駄な争いはしたくはない。どうしても通すつもりはないのか?」




「ああ。こいつを回収したけりゃ、俺たちに勝ってからだ」



『よせ!戦っちゃだめだ!!君たちの敵う相手じゃない!!』



ライはプライベートチャンネルを通して、一夏たちに自制するよう促すが、時既に遅く



「威勢がいいな。やはり男の子はそうでなくてはな」



嬉しそうに笑うノネット。意外な反応に一夏は面食らったような表情をする



「よし、なら特別に・・・」



右手にランスを展開するノネット。
外周部に4枚のブレードが付いた、片手で扱うのに調度いいサイズのランス



「私は右腕一本、武器はこいつだけしか使わない」




「なっ!ふざけんな!!」




「ふざけてなどいない。むしろ調度いいハンデだと思うがな」




「ふーん、余裕ってわけ。
いいわ、さっきの言葉死ぬほど後悔させてあげる!!」



「ふふ、おもしろい。
さあ、どこからでもかかってこい。なんなら二人いっぺんにでもいいぞ」




両手を広げ構えすら取らない。明らかな挑発



「このぉぉぉぉっ!!」



先に飛び出したのは一夏。
瞬間加速を作動させ、白式は瞬時にトップスピードに到達



高速で接近し、雪片を振るうが・・・



先ほどまで正面に捉えていたはずのノネットの姿が、視界から消える



「奇襲か、悪くはないな」



「っ!!」



慌てて振り返る一夏。いつの間にか真横の死角に回り込まれていたのだ



「どうした?もう終わりか」



「くっ!!まだまだぁっ!!」



振り向きざまに雪片を薙ぐ一夏だが、虚しく空を切り裂いた



ノネットは軽く後ろに下がることで雪片の斬撃をかわしたのだ



かわされながらも、一夏は何度も雪片を振るうのだが




ノネットは一夏が繰り出す斬撃を完全に見切り、タイミングを合わせて体を捻りながら、スラスターを一瞬軽く噴かし、軽々と避ける



その様は、まるでダンスのステップを踏むかのように軽やかなものだった



「なるほど、スジはいい。だが!!」



一夏の斬撃をかわしたノネットが姿勢を低くした途端、一夏の背中をゾクリと寒気のようなものが走った



「私と戦うには十年早い!!」



瞬間



「がっ!!」



ランスによる強烈な一突き。
姿勢を低くし、体重を乗せた一撃をモロに腹部に受けた一夏



地面に何度も叩きつけられながら吹き飛ばされる。それほどの威力なのだ



「一夏!!よくもっ!!」



甲龍の肩のアーマーがスライドして開く。衝撃砲の発射体勢だ



鈴は衝撃砲を放つが



「おっと」



「なっ!!」



ノネットはスラスターを使用して斜め前方に滑り込むように移動して、衝撃砲の射線から逃れたのだ



「一度避けたからって!!」



衝撃砲の速射、これは避けられないはず。
そう思っていた鈴だったが



「嘘っ!!」



連続して発射される見えない砲弾。その射線から的確に逃れながら接近してくるノネット



「どうして・・・」



愕然とする鈴に急接近したノネットが、その勢いのままランスを突き出した




「きゃあああああっ!!」



一夏同様吹き飛ばされる鈴



「見えない砲撃とはなかなかユニークだな。
だが残念。ヤバイい何かを感じると、考えるより先についつい体が動いてしまう性質でな」



そう、それは数多の戦場を潜り抜けてきたことで磨かれた生存への本能。
言うなれば野生の勘とでも言ううべきもの



ノネットはその勘だけで衝撃砲を完全に避けたのだ



「それに一度避けてしまえばその武器の性質もおおよそ理解できる。続けて避けるくらい簡単なものさ。
これくらい出来なければ、ナイトオブラウンズの名が廃る」



「く・・・そ・・・」



地面に手を付きながらなんとか立ち上がる一夏



全身に力が入らず体が震え、思うように立ち上がれない




先ほどの一撃はバリアーを貫通していたため、強烈な痛みに襲われているのだ



今まで感じたこともないほどの強烈な痛み。
ごほっ、と咳き込むと同時に僅かに血を吐いてしまった










「くっ!!」



握りしめた拳に思わず力が籠る



鋭い視線でモニターを見つめるライ



その先には軽々とあしらわれ、ボロボロになっていく一夏と鈴



圧倒的なまでもの力の差。そうこれがナイトオブラウンズの恐ろしさなのだ
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