IS〜銀の軌跡
□episode 6
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「そんな!それでは対処のしようがないではないか!このままでは一夏が」
箒の言葉にセシリアの表情も曇る
「いや、対処法が無いわけでもないよ。
あの衝撃砲にも弱点はある」
「「え・・・?」」
視線をライに向ける二人
「衝撃砲の射線は直線にしか放てない。
その証拠に・・・」
視線をモニターに映る鈴に向けるライ。
箒とセシリアも釣られて視線を向ける
「鈴自身が全方位への軸回転を続け、常に動き回っているだろう」
思わず、あっと声をあげてしまう二人
「そこまでわかっているなら皇、おまえなら凰の、甲龍の『衝撃砲』相手にどう戦う?」
今まで黙って試合を見ていた千冬がライに訊ねた
「彼女の動きと軸回転から、衝撃砲の砲身のおおまかな位置は推測できます。
後はハイパーセンサーが感知した空間の歪みから砲身の位置を確認し、破壊するだけです」
表情一つ変えず、サラリと言ってのけるライを見て、箒とセシリア、そして山田先生は唖然としていた
まるで、出来て当然と言わんばかりの様子のライだが、それがどれほど高度な技術を必要とするか三人には理解できる。
そして目の前の彼は、それが当たり前のように軽くこなせる技量の持ち主であると
「なるほどな。やはりあの程度ではおまえの相手になりそうもないか」
一人だけ納得したかの表情をする千冬。
直ぐに視線をモニターに戻す千冬とライ
どこか釈然としない様子の箒、セシリア、山田先生の三人も試合の観戦に戻った
◇
「ふーん。よくかわすじゃない。衝撃砲(龍砲)は砲身も砲弾も目には見えないのが特長なのに」
予想以上の粘りを見せ、衝撃砲と鈴自身の動きに徐々に対応し始めた一夏に意外そうな声をあげる鈴
「へへ、いいコーチが指導してくれたからな。
そう簡単には負けねえよ」
この数週間訓練に付き合ってくれた箒にセシリア、そしてライに感謝すると同時に、このままむざむざ負けては訓練に付き合ってくれた三人に申し訳がたたない
(「―――とはいえ、どうにかして先手を取らなければ絶対に負ける。」)
衝撃砲の位置が掴めない以上、後手に回れば一方的に攻撃を受け続けることとなりこちらが不利
とはいえ、相手は代表候補生、実力差は明らかで無謀な特攻は通用するはずはない。
しかも鈴はセシリアとは逆に戦闘になると冷静になるタイプだ
(ならば冷静さを失わせる、あるいは相手の想定外の攻め方で攻めるといい)
「!!」
不意にライが訓練の際に言っていた言葉が頭の中に浮かぶ
(「そうだ、相手との実力差がある場合に打つべき手段は・・・」)
“奇襲”
この一週間、ライと千冬の特訓で身に付けた技能を使えば、鈴の意表を突き、一撃を入れることも可能
そして一夏には、相手のバリアを問答無用で破る最強の刀がある
その一撃を決めることができれば・・・
だが、この手が通用するのは一度きり。
失敗すれば後がない。そう考えるとどうしても躊躇ってしまう自分に気付く
(「こんな弱腰じゃ勝てるはずないよな」)
圧倒的に違う実力差を埋めるためには――――つまり、そんな相手に負けない事と言ったら『意思(かくご)』ぐらいしかない
「鈴」
「なによ?」
「本気で行くからな」
覚悟を決めた一夏。真剣に見つめる一夏の気概に押されたのか、鈴は少し動揺した素振りをみせる
「な、なによ・・・そんな事当たり前じゃない・・・とっ、とにかくっ、格の違いを見せてあげるわよ!」
鈴はそのバトンのような両刃青竜刀を1回転させて構え直す
一夏は急激なGに耐えられるよう、若干前傾気味の加速姿勢に入った
◇
「あれをやるつもりだな」
「みたいですね」
モニターを見ていた千冬が呟き、ライも同意する
「「あれ・・・?」」
二人の言うあれが何か知らない箒とセシリアは首を傾げる
「やはり『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』を一夏に吹き込んだのはおまえだったのか。
あいつが自分で思いつくとは思えん。誰かが入れ知恵したんだろうと思ってはいたがな」
隣に立つライを見据える千冬
「それで、どうでした?
なんとか物になりましたか?」
「ああ、おまえが基礎を固めてくれておいたおかげで、予想以上に簡単に習得できた。
使いどころさえ間違わなければ充分実戦でも通用するだろう」
それはよかったと小声で呟き、再びモニターを見据えるライ