IS〜銀の軌跡
□episode 1
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「ちょっとよろしくて?」
不意に声をかけられて振り返る二人。そこには一人の女子生徒が居た
ロールを掛けた、長く鮮やかな金髪が印象的な碧眼の少女
彼女の仕草や言葉遣いから、貴族、あるいはどこかのお嬢様であるだろうと瞬時に判断するライ
「へ?」
「何か用かい?」
「まあ! なんですの、その返事は。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、相応の態度と言う物があるのではないかしら?」
どうやら二人の態度が気に入らなかったようだ
「悪いな。俺、君が誰か知らないし」
「わたくしを知らない? このセシリア・オルコットを? イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」
一夏の言葉に体を震わせる金髪の少女セシリア
「あ、質問いいか?」
「ふん。下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」
「代表候補生って、何?」
一夏の言葉に周囲にいた女子たちがずっこけ、ライも思わず苦笑してしまう
「あ、あ、あ・・・あなたっ、本気でおっしゃってますの!?」
「おう。知らん」
なぜか自信ありげに言う一夏
「信じられない。信じられませんわ。極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら。常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら・・・」
呆れかえっているセシリア
「代表候補生とは、国家IS操縦者の候補生のことだよ。要するに選ばれた人間ってことさ」
ライの説明に納得いったようすの一夏
「そう! その候補生として選出されたエリートなのですわ!」
やっとの事で代表候補生の意味を知った一夏相手にセシリアは自らがエリートだと自慢する
「本来ならわたくしのような選ばれた人間と、クラスを同じくすることだけでも奇跡・・・幸運ですのよ。その現実をもう少し理解していただける?」
「そうか。それはラッキーだな」
「・・・馬鹿にしていますの?」
(この女は、どうしてもおまえや、もう一人の男に、自分の力を認めさせたいらしいようだな)
うんざりした様子のC.C.
(私はこういう自分勝手で、傲慢な女が一番嫌いだ)
(君がそれを言うかい・・・)
(む、どういう意味だ?)
C.C.の追及を無視して現実に意識を向けるライ
「大体、あなたISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。男でISを操縦できると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待外れですわね。そちらのあなたは一般的な常識を持ち合わせている分マシですが」
「俺に何かを期待されても困るんだが」
自分は望んでここに居るわけではない、と言いたそうな一夏
「ふん。まあでも? わたくしは優秀ですから、あなた方のような人間にも優しくしてあげますわよ。ISの事でわからない事があれば、まあ・・・泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくてよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」
教官を倒したことを強調するセシリアだったが
「あれ? 俺も倒したぞ、教官」
「は・・・?」
一夏の言葉に唖然とするセシリア
「倒したっていうか、いきなり突っ込んできたのを躱したら、壁にぶつかって動かなくなったんだけど」
「わ、わたくしだけと聞きましたが?」
「女子ではってオチじゃないのか?」
「あなた! あなたも教官を倒したっていうの!?そちらのあなたは!?」
ものすごい剣幕で訊いてくるセシリア
「い、いや・・・僕は入試自体を受けていないよ」
セシリアの勢いに引き気味に答えるライ
「入試自体を受ける必要がなかった。と言いたいのでしょうか?」
怒っているのか体を震わせているセシリア
「えっと・・・落ち着けよ」
「こ、これが落ち着いていられ――」
ちょうどその時チャイムが鳴る
「話の続きは、また改めて!よろしいですわね!」
自分の席に戻っていくセシリア。一夏も自分の席に戻っていった