IS〜銀の軌跡

□episode 4
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「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、皇。試しに飛んで見せろ」



四月下旬、ライたちは千冬指導のISの授業を受けていた



「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」



せかすように言う千冬に、首からぶら下げているアクセサリーに意識を集中させるライ




瞬間、ISが展開され、ライは『ランスロット・クラブ』を装着し、地面から数十センチほど浮遊していた



視線を隣に移すと、セシリアと、一夏も展開を終えて、浮遊していた



「よし、飛べ」



言われて、急上昇をするライとセシリア。ほぼ同時に上昇を開始した二人だったが、あっという間にセシリア突き放すライ



「うわっ!!皇くん速〜い!!」



クラスメイトの女子が思わず声をあげた



セシリアと試合したときよりもさらに速いのだから無理もない



(「やはり、オルコットとの試合の時は、相当手加減していたようだな」)



遥か上空で静止したライを見て思案する千冬



二人に遅れて上昇を開始した一夏だが、その速度はセシリアよりもかなり遅い



「何をやっている。スペック上の出力は、ランスロット・クラブには劣るが、ブルー・ティアーズよりも白式の方が上のはずだ」



通信回線を通して、早速千冬のお叱りを受けている一夏



つい先日、急上昇と、急降下をならったばかりで、その際に『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』と教わったのだが、どうにも感覚がつかめていないようだ




「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」



「そう言われてもなぁ。大体、これってどうやって浮いているんだ?」




「説明してもいいけど、今は時間がないからまた今度。まあ、飛んでいるうちに慣れてくるはずだよ」



そのまましばらく飛んでいた三人だが。千冬から通信で次の指示が入る



「次は急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地面から十センチだ」




「了解です。ではライさん、お先に」



急降下を開始するセシリア。ぐんぐんと降下していき、完全停止も難なくクリアーした



「さすがだね」



「いえ、そんな・・・」



通信越しのライの言葉に頬を赤くしながらモジモジとしているセシリア



「じゃあ、次は僕が行くよ」



ライは上昇時よりもさらに速い速度で、降下していく



まったくスピードを落とすことなく、地面からジャスト十センチの所でピタリと急停止した



「お見事ですわ」


セシリアが駆け寄ってくる



ギュンッ―



風切音に視線を向けると、一気に降下してくる一夏の姿。このままでは地面に激突する



ライは瞬時に両腕のハーケンを射出して一夏に巻きつける



地面に激突するスレスレの所で停止した一夏



「大丈夫か?一夏」



「あ、ああ。おかげでなんとか」



宙吊り状態で礼を言う一夏。地面に激突こそしなかったものの、シュールな光景に、くすくすと笑い声をあげるクラスメイトたち



「馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った。グラウンドに穴が開くところだったぞ」



「・・・・すみません」



宙吊り状態で説教を受ける一夏



ハーケンを回収し一夏を降ろすライ



「まあ、いい。織斑、武装を展開しろ。それくらいは自在にできるようになっただろ」



「は、はいっ」



右腕を突出し、左手で右腕を握りしめる



集中し、物体を斬る、刃のイメージを思い浮かべる一夏。手のひらから光が放出され、形を成していく



光が完全に収まると、一夏の手には近接ブレードの“雪片弐型”《ユキヒラニガタ》が握られていた



「遅い。0・5秒で出せるようになれ。次、オルコット。武装を展開しろ」



「はい」



左手を肩の高さまで上げ、真横に腕を突き出すセシリア



一瞬爆発的に光ると、その手には狙撃銃、スターライトmkVが握られていた



「さすがだな、代表候補生―――ただし、そのポーズはやめろ。横に向かって誰を撃つつもりだ。正面に展開できる様にしろ」




「で、ですがこれはわたくしのイメージをまとめるために必要な―――」




「直せ。いいな」



有無を言わせぬ千冬の一睨みに頷くしかなかった



「オルコット、近接用の武装を展開しろ」



「あ、はっ、はいっ」



新たに近接用の武装を展開しようとするセシリアだが、先ほどとは違い、手の中の光はなかなか像を結ばず、武装の展開に手間取っている



「まだか?」



「す、すぐです。―――ああ、もうっ!《インターセプター》」




武器の名前を半ばやけくそに叫ぶ。それによって、ようやく武器が構成された




ちなみに、このやり方は教科書の頭に書かれている初心者用の手段だ



「・・・何秒かかっている。お前は、実戦でも相手に待ってもらうのか?」



「じ、実戦では間合いに入らせません!ですから―――」



「ほう。初心者との対戦で簡単に懐を許していたようにみえたが?」



「あ、あれは、その・・・」



「まあいい、皇は・・・必要ないな」



「え?どうしてだ千冬姉」



「織斑先生だ、馬鹿者。あいつのISを見てみろ」



ランスロット・クラブをまじまじと見つめる一夏。何かに気付いたようで、あっと声を上げた



「僕のクラブはISを展開した時に、既に全武装を装備し、展開状態になるんだ」



実際に、ヴァリスは腰のマウントに、二本のMVSは両脇の鞘に収納されており、四基のスラッシュハーケンもそれぞれ両腕と腰に収納されている



「つまり呼び出す必要がないってことか。便利だな」




納得したようすの一夏



「時間だな。今日の授業はここまでだ」



授業が終了し、解散していく生徒たちだが



「待て、皇」



千冬がライを呼び止めた。嫌な予感がし、ギギギっと音をたてながらゆっくりと振り返る



「今夜は逃がさんぞ。覚悟しておけ」



ニヤリと嫌な笑みを浮かべる千冬に、ライは冷や汗を流していた
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