IS〜銀の軌跡

□プロローグ
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皇暦2119 −皇帝直轄領 日本ー



この日、一人の男が死んだ



ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。神聖ブリタニア帝国第99代にして唯一皇帝として即位



力と恐怖によって世界を自らの手中に収めんとし、逆らう者は全て排除していった



彼を皇帝と認めなかったシュナイゼル及び黒の騎士団との大規模戦闘に勝利したルルーシュ皇帝は、難攻不落の天空要塞『ダモクレス』と大量破壊兵器『フレイア』を掌握し、圧倒的な力と恐怖により世界を我が物とした



世界中の人々が、魔王ルルーシュを憎み、恐怖し、そして同時に絶望した。世界は圧倒的な恐怖によって支配されるしかないと・・・


だが、ルルーシュ皇帝の支配はあっけなく幕をひくこととなる


世界を手中にしたルルーシュが、真っ先に行ったのは、パレードの余興として、反乱を起こした者たちの公開処刑だった


そんな中、一人の人物が立ち塞がる


仮面の人物ゼロ


ゼロは、配備されていた護衛をかわし、ルルーシュの下に辿り着くと、手にしていた剣をルルーシュの心臓に深々と突き刺したのだ


剣を引き抜かれ、崩れ落ち、台座から滑り落ちるルルーシュ


その姿を見た人々は、処刑されようとしていた者たちのを解放していく



魔王ルルーシュを倒した英雄ゼロ。この光景は世界中の人々の目に、記憶に、そして歴史に刻まれることとなる



だが、ほとんど者は知らない、ルルーシュが何の為に世界を手にし、何をなそうとしていたかを・・・



仮面の人物ゼロの正体を、その人物が、仮面の下で泣いていたことを・・・



民衆が何度もゼロの名を呼ぶ中、その光景を離れた位置からじっと見つめる青年の姿が



「さようなら・・・ルルーシュ」



ここにもう一人、全ての真実を知る者が



銀髪の青年、ライは涙を流しながら囁くが、その声は民衆の歓声に儚くかき消されたのだった
















それから数か月後・・・




神根島 遺跡



「本当に、行ってしまうのかい・・・?」



「ああ、これ以上僕はこの世界にいてはいけない」



スザクの言葉に微かに苦笑しながら答えるライ



「ライさん・・・」



スザクと共に見送りに来ていたナナリーもライを呼び止めた




ルルーシュが命と引き換えに成し遂げた『ゼロレクイエム』により、世界は軍縮の道を歩み、争いごとは確実に減少している



ルルーシュの意志と思いを託されたライも、優しい世界の為に、自らの持ち得る全ての能力を注ぎ込んだ



ある意味ではゼロとなったスザクやナナリー以上に世界の為に尽力したのがライだった



「もうこれ以上誰も傷つけないために・・・僕のギアスを、この世界から消し去るにはこれしか方法がないんだ」



ライに残された最大にして最後の役目、それは自らのギアスをこの世界から消し去ること。暴走したギアスはこの世界に再び新たな争いと悲劇を産み出す最大の脅威となる



そうなる前に、脅威の源となるギアスをこの世界から取り除かなければならない




だが、契約により自ら命を絶つことはできない・・・ゆえに、取るべき道はただ一つ。三度び眠りにつく。今度は二度と目覚めないよう永遠に・・・



「もう二度と悲劇を繰り返さないためにも・・・ね」



「・・・そう・・だね」



スザクもライと同様、ギアスの暴走により大切なものを失っているからこそ、ライの気持ちが痛いほどによくわかる



「ごめんねナナリー。君や、スザクに全てを押し付けて・・・自分だけ逃げるみたいに・・・」



「そんなことありません!!あなたがいてくれたから私も、スザクさんもここまで来れたんです!だから・・・」



震える声で言うナナリーをそっと抱きしめるライ



「ありがとう」



ナナリーの瞳からは大粒の涙が溢れ出た



そっとナナリーから離れたライはスザクと向き合う



「忘れないよ、ずっと・・・」


そう言って、手を差し出すスザク。差し出された手を取り、スザクと握手を交わすライ




「別れは済んだか?」



「ああ、すまないC.C.始めてくれ」



C.C.の額に赤くギアスの紋章が浮かび上がる。同時に、遺跡の大扉に刻まれたギアスの紋章も赤く輝き始めた



扉に向かって歩き始めるライ



ライが扉に触れると、重々しい音をたてながら扉が開く



扉の先は真っ暗な漆黒の闇が一面に広がっている



闇の中を進んでゆくライ。徐々にその姿は見えなくなっていく



スザクとナナリーは、ライの姿が完全に見えなくなるまでじっと見つめていた。ライの姿をその目にしっかりと焼きつけるために



(おやすみ)



不意にライの耳に懐かし誰かの囁くような声が聞こえてきたのだった




こうして、銀の王は眠りについた・・・















































はずだった・・・
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