IS〜銀の軌跡

□episode 6
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衝撃砲が砲火を噴く寸前に、『瞬時加速』を作動させる一夏



急激な加速により発生したGによって、体のあちこちが締め付けられ、内臓が圧迫されるが、ISに備わっている操縦者保護機能でそれに耐える一夏



鈴に刃が届きそうになった瞬間



ズドォオオオオオオンッ!!




突然大きな衝撃がアリーナを襲った。



鈴の衝撃砲――――ではない。威力も範囲も桁が違う



ステージの中央に、もくもくと爆煙が上がる。
どうやらさっきのは『それ』が、アリーナの遮断シールドを貫通した衝撃波らしい












「なんなんだ? 一体何が・・・」



状況に混乱する一夏に、鈴から通信が入った



『一夏! 試合は中止よ!! すぐにピットに戻って!!』



何をいきなり言い出すのか。そう思った瞬間、ISのハイパーセンサーが緊急通告を行ってきたのだ


―――ステージ中央に熱源。所属不明のISと確認。ロックされています



「なっ!!」



アリーナのシールドは、ISと同じ物で出来ている

    

つまり、それを貫通できるだけの攻撃力を持った機体が乱入、こちらをロックしている



「あたしが時間を稼ぐから、その間に逃げなさいよ!!」



「逃げるって・・・そんなの女を置いてできるか!!」



「馬鹿!! あんたのほうが弱いんだからしょうがないでしょ!!」



遠慮のかけらもなく言い放つ鈴。ここまではっきり言われると反論すらできない



「別に、あたしだって最後までやるつもりは無いわよ。こんな非常事態なら先生達がすぐに――――」



「あぶねぇ!」



間一髪、鈴の体を抱きかかえてさらう。
その直後にさっきまでいた空間が熱線で砲撃された



「ビーム兵器かよ・・・。しかもセシリアのISより出力が上だ」



ハイパーセンサーの解析結果を知った一夏の背中に、冷たいものが伝っていく



「ちょ、ちょっと馬鹿! は、離しなさいよ!」



「ちょ、暴れんな。―――っておい! 殴るな!」



「う、うるさいうるさいうるさいっだ、大体、どこを触って――――」



「ッ!! 来るぞ!」



暴れる鈴をよそに、アンノウンから再びビームが放たれた。
しかも今回は単発ではなく連射だ



どうにかかわした一夏と鈴。
ビームの連射により、煙が晴れてアンノウンがついにその全貌を現す



「な、なんだ・・・あれ・・・」



姿からして異形だった。
深い灰色をしたそのISは手が異常に長く、肩と頭が一体化しているような形



何より特異なのが、その『全身装甲《フル・スキン》』だった



「お前、何者だよ」



「・・・・・・・・・・」



当然ながら謎の侵入者は一夏の呼びかけに答えない



『織斑君!凰さん!今すぐアリーナから脱出してください!! すぐ先生達がISで制圧しますから!』




割り込んできたのは山田先生だった



「―――――いや、先生達が来るまで俺たちで食い止めます」



謎のISは遮断シールドを突破してきた。
もしこのまま野放しにしておけば、観客席にいる人間に被害が及ぶ可能性も




「いいよな、鈴」



「だ、誰に言ってんのよ。そ、それより離しなさいってば! 動けないじゃない!」



「ああ、悪い」



一夏が腕を離すと、即座に離れる鈴



『お、織斑くん?! だ、ダメですよ! 生徒さんにもしもの事が――――』



山田先生が言い終わるより早く、敵ISが空に浮かび、突進を仕掛けてくるが、二人はそれをかわした



「向こうはヤル気らしい」



「そうね」



互いにそれぞれの武器を構える二人




「一夏、あたしが衝撃砲で援護するから突っ込みなさいよ。武器、それしかないんでしょ」



「その通りだ。じゃあ、それで行くしかないな」



お互いの武器を当てる。これが合図、一夏と鈴は同時に飛び出した










「もしもし!? 織斑君聞いてます?! 凰さんも!」



「本人達がやると言っているのだから、やらせてみてもいいだろう」



「お、お、織斑先生! 何をのんきなことを!」



「落ち着け。コーヒーでも飲め。糖分が無いからイライラするんだ」



「・・・・・・あの、先生。それ塩ですけど」



「・・・・・・・・・・」



ぴたりとコーヒーに運んだスプーンを止めて、白い粒子を容器に戻す。



「なぜ塩があるんだ」



「さ、さあ・・・? でもあの大きく『塩』って書いてありますけど・・・」



「・・・・・・・・・・」



「あっ! やっぱり弟さんの事が心配なんですね!?だからそんなミスを―――」



「山田先生、コーヒーをどうぞ」



「へ? あ、あの、それ塩が入ったものじゃ――――」



「どうぞ」



ずいっと勧められたコーヒー(塩入)、真耶はそれを涙目で受け取る。



「い、いただきます・・・」



「熱いので一気に飲むといい」



二人のやり取りに、その場にいた全員が悪魔だ、と思う中、ライだけはモニターをじっと見つめていた



(「妙だ・・・あのISの行動。まったくブレがない・・・そして回避行動に迎撃動作・・・考えられる可能性は・・・」)
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