novel

□魔法少女と機械少年
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1.彼女の心は今


─王の玉座─


島の震動が止まる。
どうやら、あのバカもたまにはうまくいくことがあるのだな、と思った。

毎回奴等の破壊を命じてきたが、一度も壊すことは出来ず、しかもほとんど返り討ちを受けていたが、ここでか…

まぁ…タイミングが悪いとも言えるが、良いとも言えた。
下僕のバルログは、奴の救出に成功したのだろう…


どうして、今まで邪魔だと言って敵に回していた奴の無事を祈ってしまったのだろう。
どうして…







─そもそも私は、奴のことが嫌いだ。

─間違いないはずなんだ。

─奴だってそのはずだ。




ぶんぶんと首をふる。


関係ない。私には一切関係ない。
私が首を突っ込むことじゃない。

奴の将来なんて…私が邪魔していいもんじゃない…



そういえば、奴の傍には奴と同種の機械の金髪小娘がいたな…
たしか…カーリー・ブレイスとか言ったか…
彼女も奴と一緒に、無事生き残ったんだろうか…

不意に脳裏に浮かぶ、バカな下僕への命令…



─あぁ…バルログ…そいつは壊していい。

─むしろ壊してくれ…




…ダメだ。
自分の気持ちなのに、これじゃ拉致があかない…


カーリーの顔を思い浮かべる。なんか腹立った。


奴の顔を思い浮かべる。

無性に痒くなった…
胸の辺り…表面ではなく…


心臓を取り出すことが出来るなら今すぐ掻きむしって、こんな苛々を紛らわしたい。


なんでこんなにも…
私の心を掻き乱すのか…



認めない…


「…認めないぞ」



魔法学の塊であるこの私が、科学の塊である機械人形に…






恋心を抱くなど…



「…罪だな」


私がではない。

そうだ。
私をこんな気持ちにさせる奴が悪いんだ。
魔法で呪いでもかけてやろうか…こう…藁人形に名前書いた紙張り付けてコンコンって…


…なんで私は奴の名前を知らないんだろう…



どうしたものかと思っていると、日の沈みかけた空から、私の心なんて何も知らなさそうな、呑気な声が聞こえて、額に軽く青筋がたった気がした。
…これはバルも罪だな…

ふぅ、と溜め息を吐いて顔を上げる。

奴と目があった気がしたのは、やはり気のせいだろう…

気のせいと思っていれば、自分は変わらないでいられるだろうと、そう思って目を反らした。

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