novel

□星屑の君へ
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1,蒼冷めた月


─月光館学園 高等部 2-F─


「あー、今日もかったるかったなぁ。な、蒼射?」

放課後のチャイムが鳴り終わると同時に、ボウシを被った1人の少年が話しかけてきた。

「順平…」

「なぁ!今日タルタル行くのか?張り切っちゃうぜー俺!」

彼は伊織順平。
自分と同じ暮らすでムードメーカー的存在の、一言で言えば「お調子者」の男子だ。

彼の言う「タルタル」というのは、影時間にだけ現れる、「タルタロス」という、謂わばシャドウの巣のことだ。
ペルソナ使いである自分は、同じペルソナ使いの仲間と共に「特別課外活動部(SEES)」に所属し、タルタロスで敵であるシャドウの討伐を行っている。
つまりどういうことかと言うと、順平もペルソナ使いなのである。

いつも通りのテンションではしゃぐ順平だが、僕は溜め息をついてこう言った。

「悪いけど、今日は無しだ」

「えぇっ?!何でだよ?」

予想通りの反応をする順平。「せっかく絶好調っぽかったのにー」とかぼやいている。
しかし、だめなものはだめなのだ。

「ちょっと知り合いから頼まれごと」

「ちょ…おまっ、そんな遅くまでかかるのか!?」

「まぁ…影時間は過ぎるだろうけど、朝までには帰ってくる…はず」

自分は決して嘘などは言っていない。

「朝まで!?ハズ!??」と驚く順平に、「じゃあまた明日」と言って教室を出た。


天宮 蒼射(アマミヤ アオイ)…それが自分の名前だ。
月光館学園高等部 2-Fに、今年の春、転入してきた。
港区巌戸台の学生寮を訪れた時、自分が平然と影時間の中を抜けてきたことで、他の寮生たちに「適性」があることを見込まれていたらしい。
寮に入ってすぐに事件は起こった。
満月の夜、タルタロスにしかいないはずの─それもこれまでにない大型らしい─シャドウが、寮を襲ってきたのだ。そのとき、自分の中の「ペルソナ」が覚醒し、なんとかシャドウを消し去ることに成功。
だが、ペルソナの召喚にはかなりの精神力が必要だった。案の定意識を失った僕は病院に運ばれ、入学早々、出欠の名簿に「欠」が並ぶことに。
思えば、そのときからだった…
自分たちとシャドウとの戦いが始まったのは…

その後の調査によって幾つかわかったことがあった。
あの日のようなシャドウは満月の夜に「イレギュラー」として現れ、しかもそれらを合計12体倒せば、この世から影時間も、タルタロスも、シャドウも、そしてペルソナも消えるのだという…

「…」

ふと思う…
もうすぐ12体目だな…と…
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