Asa Em Colapso:YooSic

□記憶の断片
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形あるものはいつかなくなってしまう事を知りながら人は造り、壊し、生んでいく。
命も繋がっていくように人の想いも繋がっていくものだと思っている。

意図せず割ってしまったマグカップの破片を見ながらそう思った。
お気にい入りではないもののやはり所有物が割れると寂しく感じてしまう。
私の妹も割れないように必死に抵抗しながら闘っている。
ビニール袋に破片を入れながら渇いた音を立てて仕事を終えた陶器の破片が場違いにカラフルに見えた。

戸棚から新しいマグカップを出して珈琲を注いだ後、ソファーに座り目を閉じて指で軽くマッサージをした。
小さく息を吐いてから珈琲に口を付け熱さに小さく身体が跳ねた。
眉間に自然と皺が寄るのが自分でも解る。
ゆらゆらする珈琲にふーふー息を吐きながらここ何ヶ月かの事を思い出していた。

暫く回想しているとソファーが沈み込む感覚がして隣を見ると同じ様に眉間に皺を寄せている人と目が合う。
人ではなくソニなんだけど。

「寝れないの?テヨン」

うんと言ってまた珈琲を飲んだ。
ソニは宿舎を出ているんだけれどユナの事が起こってからは泊まりに来る回数が増えている。
メンバーを気遣っての事だろうと思うし、正直その心遣いが嬉しい。
今日はユナの様子を見に行くのは私の番だった。
だから寝れないのだと思う。
受け入れてはいるものの、杖になり足に補助器具を付けゴムのチューブが巻かれたスプーンでご飯を食べるユナを見て胸が締め付けられる。
涙はもう見せないけれど正直堪えた。

ソニが背中を優しく撫でてくれた。
私は大丈夫だよと言う風に笑いソニの珈琲を入れる為にキッチンへ向かった。
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