Tarinat Second: ShortStory

□Welcome to the my world
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少し色が抜け始めた髪の毛の先を少しずつ確認しながら、次の美容院でのケアをいつして貰えるかを考えていた。
本当は傷んだ髪の毛よりも考えなければいけないことがあるのに、答えを引き出すことを避けるように意識の外に追いやる。

完全に振り払うことなど出来もしないのに、無駄な先延ばしだと理解しながらも。幼い頃に大切にしていた外国製のお菓子の缶にごちゃごちゃと色々なものを入れるように取り留めもないものや重要なものまでが同じ缶に入り大切に仕舞われる。
そして忘れ去る。

ふと、幼い頃のことを思い返し缶の錆びた蓋を開ければなぜ大切にしていたのかもわからないものや、大切な思い出を引き出してくれるものに出会うのだ。
幼い頃に感じていた感情や、大人になれば見れない景色と捉え方も。

人との別れがこんなに自分を取り乱すもので、こんなにどうにもならないことに悪あがきをしなんとか善い方向へ向かないかと考えてしまうなんて想像もしなかった。

それ程に大切な人ではない気もするのに、一人になってしまう不安から普段なら冷静に判断出来ることも出来なくなるなんて。

私はこんなに弱かっただろうか。
こんなに愚かだったのだろうか。

先ほどまで毛先を触っていた指は用を無くした鍵に触れ、金属の冷たくぶっきらぼうな感覚を行き来している。
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