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□桃色の季節
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どこかで物音がした気がする。

おかしい、ちゃんと魔法はかけたはずなのに。


「……美栞…?」


オレの部屋に入ってくるのなんて、父さんか美栞しかいない。

父さんは夜まで帰ってこないし、たぶん美栞がオレを迎えに来たんだろう。


「おまえ…人の部屋に勝手に入るなよ…」


美栞はいつでも大歓迎だけど、一応言っとかなきゃな。

オレは相変わらず眠気から目を開けられない。

今日はおかしい、眠すぎる。


「……美栞?」


返事がない。

おかしい、いろいろおかしい。

さすがに頑張って目を開けようとした。


「――っあ?!な、なんだよあんたら!」


目を開けて飛び込んできたのは――美栞ではなく、黒服に身を包んだ男たち。

10人程度だろうか。

ベッドに寝ているオレを取り囲んでいた。

オレが叫ぼうとすると、近くにいた1人に口を塞がれた。


「――――っ!!!」

「……申し訳ございません、しばし我慢を」

「っ?!」


男が喋ったかと思うと、その付近にいた別の男たちがオレを抱えあげた。


「なっ――?!」


訳がわかってないオレを抱えたまま、男 たちは部屋を出て家を出て…やがて馬車 の中に入れられた。


「な、なにすんだよ!」

「ご主人様がお呼びです」

「………は?」

「ご主人様がお呼びです」

「……いや、ご主人様…って… 誰……?」

「お屋敷に着けばわかります。それまで どうか、お静かに願います」


オレの返事を待たずに、馬車は男たちの ご主人様がいる場所へと進み始めた。

なんでこんなことに――?


「や、やだって!オレは家でゆっくり寝 て……オレを帰せよ!!」

「お静かに願います」

「なにがお静かにだよっ!勝手に連れて 行こうとしてるくせに……!!」


オレが助けを呼ぼうと窓を開けかけたと ころ、数人の男に押さえ込まれた。

ついでに口も塞がれる。


「――――っ!!」

「お静かにできないようですので、ご主 人様の命令により黙らせていただきま す」

「――っぷは!だからご主人様って…… え?」


未だ騒いでいるオレの目に、目の前にい た男はそっと手を乗せた。

そして何やらつぶやく。


「お眠りください」


男の言葉が聞こえたあとは、あっけな かった。

急に耐えきれないほどの眠気が襲ってき て、オレは倒れるようにして眠りにつか された。










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