長編置き場

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貴女に触れたい…ー


そう思い始めたのは
いつからだっただろう。

それはきっと出会った
あの夜から思い始めて
いたであろう気持ち。

貴女と出会ったあの夜
僕が棲む神山の森には
昔から妖が棲み潜んで
おり中には質の悪い妖
だっている人に災厄を
もたらすことを悦びと
する妖だって棲み潜む
特に闇が強く深くなる
ほどにそういった類の
妖達が活発になるもの
だからそれを知ってか
知らないのか分かりは
しませんが人間たちは
陽が沈む前には山での
作業を終え自分の住む
町へと戻り帰っていく。

もちろん僕たちよりも
力が強い妖はこの森に
いないせいかこの森に
一番力を及ばせている
であろう赤司くんには
いくら妖力が強くても
逆らえる妖はいない。

赤司くんの力あっての
おかげなのか昔と比べ
人を惑わし神隠しへと
遭わせたりするような
ことも減り今は随分と
平穏な日々を過ごして
いる。

けれど貴女と初めて
会ったあの夜だけは
違った。

どうやら赤司くんが地方
から集まり始まる山神の
重大催事へと赴いている
隙を狙っていたそれも人
を惑わすことを悦びの糧
としている妖が人の子を
惑わせ森に誘い込んだと
僕と同じ人間が大好きで
人を愛している小さな妖
たちが僕に知らせにきて
くれて僕はただ助けたい
一心で森の中をくまなく
探し走り回った。

「…何かが起こる前に
見つかればいいですが…」

「あっ、テツ様!あそこ!」

「テツ様!人!人いた!!」

「…!!どこですかっ!!」

僕の少し前を走っていた
小さな妖たち。

彼らから人を見つけたと
報告を受け僕は休むこと
なくすいません案内して
下さいと彼らに頼み強く
地面を蹴りさっきよりも
足を早め走り出した。

テツ様人の子あぶない
人の子あぶない…!!

そう危険を発信するよう
に何度も人の子あぶない
と繰り返す小さな妖たち。

それは僕が触れるのが
危ないという意味では
なく人の子が危ないと
いう意味。僕はどうか
間に合いますようにと
願いながら彼女の元に
辿り付けば道の奥底…
闇の奥底に潜んでいた
妖はいち早く僕が来た
ことに気付き舌打ちを
したあとすぐに気配を
闇の中へ紛らわせ姿を
消していった。

姿を消した。

つまりは自分の住み処へ
これ以上何もせず戻って
いったことに安心し僕は
この暗闇の中一人歩いて
いる小さな少女を人の町
へと戻すべく小さな少女
をなるべく怖がらせない
ように驚かせないように
優しい声音でゆっくりと
声をかける。




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