長編置き場

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テツくんと初めて会った
のはわたしが10歳の時。

おじいちゃんの家の二つ
隣に住む同い年でわたし
より可愛いさつきちゃん
と近くの山で遊んでたら
知らぬ間に山の奥底まで
来てしまったらしく山の
日はすでに暮れかかって
いて気が付けばわたしは
山の中で迷子になっていた。

「…道が暗い…これじゃ
帰れない…どうしよう…」

木々が生い茂る山道。

月の光がこの場所まで
届いてくれれば自力で
帰れたと思う。だけど
その願いを嘲笑うかの
如く天まで高く大きく
成長した木々たちの葉が
空を覆い隠し風が吹く度
ざざぁと不気味に揺れる。

…こわい…こわい…

さつきちゃんは無事に
家へ帰れたのだろうか

もしそうだったらいいな。

こんな怖い思いをしてる
それだけはわたしだけで
十分だから。

「…はぁ…」

寒いなぁ…

「どうかしましたか?」

「…え」

「はい?」

ふと、どこからともなく
聞こえた声。

それは確かにわたしへ
向けている言葉。もし
かして町の人が探しに
きてくれたのだろうか。

もしそうだったら安心だ。

安堵した息を小さく吐き
これでやっと帰れるそう
安心し声のした方に振り
向けばそこには真っ暗な
山道の中に眩しくない
温かい光を全身に纏い
まるでわたしの世界に
存在するにはあまりに
儚すぎるまるで神様を
目の前にしてるような
気持ちに心が震え恐怖心
などいつの間にか消えて
いて突然現れた温かい光
を纏う彼に気が付けば腕
に赤い紐を結ばれ申し訳
ありませんがここを出る
までの我慢ですこの先に
ある大きな朱色の鳥居を
抜ければ人間の住む町へ
帰れますそこまでは案内
できますので共に行きま
しょう僕たちのお友達が
惑わせてしまったようで
すね。普段はいい子なん
ですが…と彼の言ってい
ることはよくは分からな
かったけどでも彼のせい
じゃないことだけは幼い
わたしでも分かったから
あなたのせいじゃないよ
だから謝らないでいいよ
と前を歩く彼の後ろ姿に
向けて言えば彼は歩いて
いた足を止めありがとう
ございますとわたしの方
へ向きお礼を述べるから
この人はなんて律儀な人
なんだろうと思うと同時
になんて綺麗に微笑む人
なんだろうとそう思った。

「ここまで来ればあとは
もう大丈夫ですあの鳥居
を抜ければ帰れますよ」

「はい、
ありがとうございました」

「いえ。
それでは僕はこれで…」

「あ…あのっ!」

「はい何でしょう?」

「あの…その…
またここに…あなたに
会いに来ても…いっ、
いいですか…?!」

「…ここは人ならざる者
たちが住み暮らしてる
山…本来ならば危ない
場所なんです…ですが
微力ではありますが
もしまたこの山へ来た
際には僕があなたの事
お守りすることを約束
します」

僕の名前はテツヤ…
黒子テツヤです。

「テツヤ…テツくん…」

苗字は人間の方達の
真似っこなんですけどね。

ふふ、と優しさの中に
悪戯っぽさを含むテツ
くんの優しい笑い声が
だんだんと遠のいていく。

さっきまで目の前にいた
彼の姿はもうすっかりと
なくてわたしの姿を見つ
けたさつきちゃんに思い
きり泣きつかれお父さん
お母さんには説教をされ
夜はおじいちゃんと寝た。


それが
わたしがテツくんと一番
最初に出会った頃のお話。



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