星の欠片

□序章
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地は灰色の砂で埋め尽くされる。そこから生えるように埋まるようにして百何十年前に建てられた高層ビルらしきものが覗く。それは既に倒壊しかけており砂によって支えられ存在しているのみだった。あれも何十年もすれば地に転がる砂の粒と何ら変わらなくなる。
世界は止め処なく流れ、留まろうとしない。昨日まで見ていた美しい風景が次の日目覚めると灰と砂埃しかない土地になっている。そんなこともおかしくはない。
2113年の世界はそんな世界だった。
誰もが諦め、留まることをやめた。変わりゆく世界をただ黙って見守っている。残りわずかな種を諦め、己の命が尽きるまでこの世界を生きることしかできなかった。
何故こうなってしまったか。何故こうなる前に気づけなかったのか。
それを述べられる者はもういない。
街であったものは静寂に支配され、最後の時を待つのみだった。
そんな中、砂をこすり合わせた音が反響する。小さな響きは静寂の中大きく反響し何処からともなく音がやってくる。
その時、灰色のオブジェクトの狭間、かつては道であったであろう土地の先に小さな陽炎が揺らぐ。
黒く小さい。揺らめく度に音が反響する。次第に大きさを増し、その姿を表す。
それは、道であったで場所に足を止め、街であった場所を見回す。
暫くそうしていた後、それは諦めるようにして足を進める。

「……やはり、ここにもなかったか……。」
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