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□第九話
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「颯太君、この学校の七不思議って知ってる?」
「七不思議?そんなのあるのか?」
中庭で明紀と掃除をさぼり涼んでるところ、いきなり明紀が言い出した。
「あ、知らないんだぁ。」
あからさまにわざとらしい笑顔を張り付けて馬鹿にしたように明紀は言う。
「知らなくて悪かったな。……で、その七不思議って?」
「知りたいの?」
またもや明紀は嫌味な笑顔を浮かべる。
「別にそういうんじゃないけど……そこまで言われたら気になるだろ。」
「へぇ……。でも、颯太君知ったら泣くかもよ?」
「な、泣く訳ねぇだろ!!」
しまった
気づいた時には遅かった。
あからさま過ぎる否定に明紀はいい気になって笑っていやがる。
「そっかぁ。颯太君は強いもんねぇ。七不思議なんて怖くないよね?」
「あ、当たり前だろ……。」
完全に明紀に遊ばれていた。
なんだか恥ずかしくなってきた。
「じゃあ、颯太君には特別に教えてあげるね?」
特別ってなんだよ、と突っ込みたくなる気持ちはあったが七不思議が気になるので、黙ることにした。
それを了承ととったのか明紀は話し出す。
「私も七つは知らないんだけど……」
「知らないのかよ?!」
いきなりの展開に思わず突っ込んでしまう。
明紀は申し訳なさそうに苦笑いを浮かべ話を続ける。
「あはは……。でも、七つあるのは本当……らしいよ!!」
らしいって……もう突っ込む気力さえ失せた。
「それで……私が知ってるのは二つなんだけど、一つはこの井戸。」
明紀は横にあった井戸に腰かける。
いったい誰が何の意図でつくったのか分からないがこの学校の中庭にはなぜか井戸がある。
しかも、割と見た目は立派だ。
「で、この井戸の七不思議って?」
明紀は自慢げにグーサインをだして答える。
「井戸にお賽銭を入れると願いが叶わない。」
「何だそれ?!よくあるものだと思ったら叶わないの?!それ普通の井戸でも変わらないだろッ」
「相変わらずナイス突込みだね、颯太君。」
こいつは俺の話を聞いていたのか?
「まぁ、それは冗談として……。」
冗談だったのかよ……。
「それでこっちがマジな話ね?」
そう言うと同時に、そこにはさっきまでのふざけた顔はなかった。
俺もごくりと息を飲み明紀の言葉を待つ。
「以前この学校ではとある事故で一人の生徒が亡くなったんだよ。」
「亡くなった……?」
いきなりのことに一瞬頭がフリーズする。
「そう。それでその生徒はこの中庭の隅に生えている大銀杏の側で亡くなってたんだって。それから、そこの銀杏の木には昔から女の子の幽霊が出るんだってさ。」
「……。」
「たまに夜の学校を徘徊しては昔のクラスメートたちを探しているらしいよ。先生たちも本気にしてて誰もあの銀杏に手出しはしないんだってさ。」
「……。」
想像以上にガチな話に言葉が出なかった。
暫く二人の間に沈黙が流れる。
「……ぷッ、くすす……。」
そんな沈黙を破ったのは明紀の笑い声だった。
「な、何笑ってるんだよ……。」
「ちびった?」
「ちびってねぇよッ」
俺は我を忘れて顔を真っ赤にして反論する。
明紀は馬鹿にしたようなにやけ顔をやめることはない。
「大丈夫だよ。怖がることはないって。ただの噂なんだからさぁ。」
「そ、そうだよな。」
「ツレションしてあげようか?」
「いらねぇよッ!!」
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