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□第七話
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「でも、いきなり明紀をだしてどうしたんだよ?」
「もしかしてさ……あの子じゃないかって……。」
「え……?」
その先の言葉がなんとなくわかった気がした。
だけど、聞きたくない
聞いてはいけない
何度も頭の中をぐるぐると回る。
それでも、奈々は言葉を止めることはなかった。
「さっきの幽霊……明紀ちゃんじゃないかなって……。」
言葉にして聞いた途端、全身から力が抜けた。
体温が一気に奪われたような感覚に襲われる。
「う、嘘だろ……まさか明紀が俺らを襲うなんて……。」
「……。」
奈々は何も言わず黙り込むのみであった。
「そ、そんな……。」
頭の中がパンク寸前だった。
明紀が?
あの明紀が?
あんなに優しかった明紀がどうしてあんな声を……
何もかもが信じられなかった
「ごめん……ごめん、明紀……」
ただ、そう呟くしかなかった。
この事実に対して謝り続けるしかなかった。
その時、廊下の先から、足音が響いてきた
――コッ、コッ、コッ
それはゆっくりと、こちらに近づいているように聞こえた。
「お、おいまさか……。」
「颯太……ッ」
逃げろ
頭の中では何回も指令を出していた
だけど、それを体が聞いてくれることはない
奈々も同じように動けないで
足音の先を見つめてただ震えていた
やばい……逃げろ逃げろ逃げろ
少しずつ、少しずつ
足音は大きくなる
俺たちに近づいてくる
動けよ、俺の脚!!
願っても動かない
俺が動ければ奈々を引っ張って逃げられるのにッ
だれか、だれか助けて!!
「颯太、奈々。こんなところにいたのか?」
だが、聞こえてきた声は聞きなれた声であった。
「かず、き……?」
暗闇から出てきたのは紛れもなく和樹であった。
それを確認すると一気に緊張から解き放たれて、全身の力が抜けた。
「はぁ……びっくりさせんなよ……。」
「よ、よかったぁ……。」
俺と奈々が安堵の声を上げる。
「なんだよ?まさか幽霊が来たとでも思ったのか?」
和樹がいつもの笑顔を向けて言う。
何故だかそれが無性に安心した。
「そのまさかだよ。」
俺も笑顔で返すことが出来た。
「あれ?碧は……どうしたの?」
ふと奈々が思いだし、不思議そうに和樹を見上げる。
「あぁ、廊下の端まで行ったんだが見つけられなかった。もしかしたら俺が探しに行く間に移動したのかもしれない。」
和樹は悔しそうに先ほど歩いてきた廊下を睨みつけた。
俺と奈々もその先を見つめるが暗闇が覆うだけで何も見えない。
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