進撃の巨人 短編

□素直になれない人たちの不思議な出来事〜後編〜
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「名無しさん大丈夫かなー」




「ジャン...さっきからずっと言ってるね...」




訓練が始まって2時間

格闘訓練をしている間も名無しさんのことが気になって仕方が無い


一緒に相手をしているマルコが呆れている





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〜別の人たちは〜


「なぁ、サシャ」



「はい?みなさん何でしょうか?」



「さっき何を言おうとしてたんだ?」


「私も気になります...」





「あー...えっと...皆さん分かりませんか...?」


「何がだ?」



「名無しさんさんがジャンに抱きついたときです」


「『ジャン好き!』って言ってたよな」



「女子のみなさんなら分かる思ったんですけど...」



「あれ...?」


「どうした?クリスタ」




「誰か名無しさんさんにジャンの名前教えたんですか?」






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「んー...」


小さな少女が起きる

ねちゃったのかなーっと言い、周りを見渡す



「みんなどこだろー...]



くんれんっていってたなー


少女は上を向いて何かを考える、そして思いついたように手を叩いた


「みにいってみよう!!」


バタンっと大きなドアの音を立てて、少女は部屋を飛び出した




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「雲行きが怪しくなってきたな」


辺りが真っ黒い雲に覆われ、暗くなる


「そうだね...だけど、もうすぐ訓練終わるよ」


マルコが空を見ながら言う

そして続けて言った



「もし名無しさんが元に戻ったら、この出来事覚えてるかな?」


「どうだろうな」


俺は言う


もし覚えていたとしたら......



訓練前の出来事を思い出す


抱きしめて....額にキスして.....頭撫でて....











....殺される!?






「マルコ、今までありがとう。俺はお前に出会えて良かった」



「ちょっ、どうしたのいきなり!?」



名無しさんは俺のことなんとも思ってないと思うし、そんな奴にあんな事されたんだから

きっと嫌がるだろう....



「今の俺に好意もった名無しさんのまま元に戻ってほしいよな」


なんて半分冗談で言った

だが、ほんの少しの幻想を抱いてみる


そしたら俺も素直になれる



「....そうかな?案外変わらないかもね」


「はぁ?」


マルコの言っている意味が俺には理解が出来なかった





「あ....」


雨が降ってきた

その雨は次第に強くなっていき、あっという間に大降りとなった


冷たい風も吹いてきて、体の体温が奪われるようだ




「お前ら中に入れ!!!!!」


教官の指示で俺たちは建物の中に入り、今日の訓練は中止になった





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「名無しさんさんまだ寝てるんですかね?」


サシャがパンをくわえながら言う

.....ってなんで食ってるんだ!?


だが、もう昼もとっくに過ぎている

いくらなんでも寝すぎだろう


「俺、起こしてくる」

席を立ち上がり、食堂を出ようとする

するとコニーが襲うなよーっと言ってきたので、一発殴っといた



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「なぁ、クリスタ。訓練のときに言ってたあれ...」


「えっと...誰か名無しさんさんにジャンの名前教えたかみたいな感じのやつだよな」


「そういえば誰も教えてない」


「ああ....」


「つまりどうゆうことだ?」


「記憶があるってことか?」


「いえ...名無しさんさんの反応的にそれは無いと思うんですけど...」


「となると...どうして?」


「記憶は無くても、自分の好きだった....ジャンのことは心の奥底でほんの少し覚えていたかもしれませんね...」




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ーーコンコン



「入るぞー」


ドアを叩き、声をかける


.....が、返事がない

まだ寝ているのだろうか....?


一呼吸置いて静かにドアを開け部屋に入る





「なっ.....」



本来なら寝ているはずの名無しさんがいなかった


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慌てて廊下をバタバタと駆けながら、みんなのいる食堂へ向かう




ーーーバンッ!!!



「ちょっ、どうしたのジャン!?」



息を切らす俺にみんなが声をかける


息を整え俺は言う




「名無しさんが.....名無しさんがいないんだ....!!!!」




「えっ......!?」




みんなが目を見開く

俺だって動揺を隠せない


「トイレとかじゃないんですか...」


「私見てくる....!!」


ミカサが物凄いスピードで食堂を飛び出し、そしてほんの30秒程で帰ってきた


「どこにもいなかった」


「じゃあどこに....」



「手分けして探しましょう!!」

「ああ」


それから10分、全員で建物の中を探した

だが、名無しさんは見つからなかった


ふと、俺は窓の外を見つめる

中に居ても聞こえるぐらいの大雨


遠くで聞こえる雷の音



....嫌な予感がした







「まさか....」





俺は建物を飛び出した


一緒にいたマルコは俺を止めようとしていた


「ジャン!どこに行く気だ!!!」


「んなもん俺だって分からねぇよ!!!でも....居る気がするんだ!!」


「雷も鳴ってきて危ないんだ!!雨が止むまで待つんだ!!!」


マルコは俺の腕を掴んだ
...心配してくれてるんだろう....



だけど俺はマルコの手を振り払った



「待てねぇよ!!そう思ってるならお前は中にいろ!!」



どんなに危険だとしても名無しさんが心配なんだ


俺はマルコを無視して建物の周りを探し回った




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「ちくしょう.....どこにいるんだよ....」




建物の周りを走って探すが名無しさんが居る気配がない


今頃アイツは泣いてるのだろうか...

どこかで雨宿りとかしてるのだろうか...



体温がどんどん奪われていく、なんて寒いんだ...




一刻も早く名無しさんを見つけねぇと...




そう思ったとき、




「.....!!」






名無しさんの声がした






豪雨に紛れてはっきりとは聞こえないが、確かに彼女の声が聞こえた
...俺には分かる




目を閉じ立ちすくむ。もう一度静かに耳を澄ます



こっちか....こっちだ....!!



俺は確信するとその方向に駆け出した





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「名無しさんー!!どこだ....!!」


この近くにいるはずだ。俺は名前を呼びながら叫ぶ

絶対この近くにいるはずなんだ


俺は右手の方にある茂みをふと見た



ーーーガサッ



「...!!」


すると、茂みが揺れた


まさか........!!




「名無しさん.....!!」







「.......!!ジャン....!!」



彼女の名前を呼ぶと、勢いよくその小さな体で俺に飛びついてきた


「ふぇ....かみなり....こわかったよぉ....」


俺の胸にしがみついて涙を流す

だが、よかった.....無事で...


「もう大丈夫だ....」

俺は朝のように名無しさんの頭を撫でる。俺も名無しさんもびしょ濡れだ......早く拭かないとな





「ほら、帰るぞ」


「うん....!!」



俺は彼女を抱きかかえ、皆が待つ建物へ向かった



そのほんのり温もりを感じる体温を感じながら....




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