進撃の巨人 短編

□素直になれない人たちの不思議な出来事〜前編〜
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それは衝撃的な一日だった

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「ジャンの鳥頭野郎!!」

「うっせえ!!お前だって女のくせに女らしくねぇな!本当は男なんじゃねぇのか?」

「なんですってー!!!」


夕食時、また名無しさんと喧嘩をした
ささいな一言から始まった、くだらない喧嘩だ


あんな事を言ったが、名無しさんは可愛いと思う


俺は名無しさんが好きなんだ

だけど、向こうはそんな俺の気持ちには気づかず、俺も素直になれずああゆう事を言ってしまう




そして....





「もういい!!ジャンなんか大嫌い!!!」



名無しさんはそう言って食堂から出て行った。またやってしまった.....

好きな人を怒らせてしまうなんて、俺は最低だ....


「(俺の大馬鹿野郎...!!)」


くっと唇を噛み締める

ふと気がつくと、周りのみんなが呆れたように笑いながらこっちを見ていた


「本当素直じゃないな。お前は」


肩をポンっと叩かれた。


「なんだ、ライナーかよ。うるせぇな...俺だって分かってるよ..」

というかお前もクリスタの事好きなくせに何もしねぇじゃねぇか...


「まぁ、名無しさんさんも鈍いですからねー」

「エレンと同じで鈍感」


サシャとミカサが口々に言う

ちなみにここにいる皆が俺が名無しさんの事を好きなのを知っているらしい

...つい、こないだ知って死にたくなった



「そんなんじゃ僕が取っちゃうよ?」

ベルトルトが真面目な顔でそう言う。俺は目を見開きそいつを見た


「.....あはは、冗談だよ」

だがベルトルトはすぐにいつものように笑った。......本当に冗談か?

こいつの腹の中はよく分からない



「とりあえず追いかけてみたら?」

隣に座っていたマルコが提案してきた。


「で、でも....」

あいつ今怒ってるし...

火に油を注ぐのでは.......?




「「「いいから行く!!!」」」



「わっ....!!!!」



女子陣が机を叩き、声を揃えた。

そして、その迫力に負け、俺はしぶしぶ食堂を出た。.............女って怖えな.......

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「名無しさんさんも素直じゃないですよねー」

「ジャンの方も鈍感だからな」

「お二人ともお互いの気持ちに気づかないなんて....」

「エレンと私はお互い気持ちが通じ合ってる。両想い」

「....俺がいつお前に告白した....?」

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「.......」



名無しさんの部屋の前に立って、5分がたった


「(行っても何喋ればいいんだよー!!!!!)」


一人心の中で悶えていた。というか名無しさんの部屋なんて緊張するし....!!!

クソッ...!!


だが俺も男だ


やるときはやろう!!!



ーーーーコンコンッ



「はーい....」



ーーーーガチャッ



「..ってジャン!?」


「....よぅ..」


ドアを開け、俺の顔を見て驚いた顔をした。だがすぐに先ほどのように怒った顔をした


「...何しにきたの....?」


俯きながら名無しさんは俺に言った

「ええっと....」

何を言えばいいんだろうか。



「さっきは....悪かった....」

俺は名無しさんを見て謝った
すると名無しさんは俺が謝るのは珍しいみたい感じの顔をしていた

「ジャン...珍しい...」

名無しさんはやはりそう言った

その言葉にちょっとだけムッとした

人が謝っているのに...






「みんなに言われて来ただけだよ!別にお前の為に来たわけじゃないんだからな!!!」


.........俺はまたやってしまった


「みんなに言われてか...」


名無しさんは呟くように何かを言ったが、俺には聞こえなかった

そして名無しさんは俯きながら「もういい。期待した私が馬鹿だった。」と言ってドアを閉めた




「ちょっ、まてよ..!!!!」


俺は引きとめようとするが部屋からは返事が無かった

「なんなんだよ....」

仕方がなく、ため息をつき俺は名無しさんの部屋を後にする




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「私のばか....」


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食堂に戻ると皆が俺のところに駆け寄り名無しさんのことを聞いてくる

俺はさっきあったことを言うとみんなが口を揃えて言った




「「「馬鹿」」」



「なっ....」



た、確かに俺が悪いけど....

この後、就寝時間まで説教を受けた俺だった




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その日の夜


「あのまま寝ちゃってたのか....」

食堂に少女が入ってきた

「もう夜中の2時だし皆寝てるかー」

独り言を言いながら水道へ向かっていく

「あーのど渇いたー......ん?」

テーブルの上に透明な水が入ったコップが置いてあったのだ

「誰か飲もうとしたのかな?まぁ、いっか。飲んじゃえ」




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そして次の日の朝



「大変大変!!!!!」

廊下のドタドタと駆ける音に俺は目が覚めた。
なんだよ....うるせぇな...

起床時間まではあと一時間はあるはずだ

「何かあったのかな...?」

上のベットで寝ていたマルコが俺に言ってきた

「さぁな」


廊下の声はどうやらサシャのようだ


「名無しさんさん!!名無しさんさん!!」

何故か名無しさんの名前を叫んでいた

....名無しさんに何かあったのか...??

俺は慌ててベットから飛び出し部屋を出る。マルコも「僕も行くよ...!」とついてきた





廊下に出ると、皆が眠そうな顔で集まっていた

「何かあったの?」

ミカサがサシャに話しかける


するとサシャは言った


「朝起きたら名無しさんさんが居なかったんです!!!!!」



「はぁ...?」



俺は声を漏らした

どうゆう事だよ....名無しさんが....いない?


「な、なんだよ!!ちゃんと説明しろよ...!」


「ジャン落ち着け!!!」


戸惑いが隠せず、サシャに怒鳴りながら尋ねる。サシャはビクッとし、それを見てライナーが俺を止めた


「トイレとかに行ったんじゃねーの?」

あまり心配していないようなエレンはそう言った

だが、確かにそうかもしれないな...


少しだけ安心した感じがしたが、サシャの一言で崩れ去った



「トイレとかお風呂場とか探したけど、いなかったんです!!!」



「「え.....」」


その言葉に俺たちは目を見開く


じゃあ名無しさんはどこへ....??


「他に探してない場所はあるの?」

ベルトルトが尋ねる......よく見ると手が震えている....

よほど心配なのだろうか....やはり、コイツ名無しさんのこと...




「あ、あと探してないのは.......食堂です!!!」


サシャが答える





俺たちはお互い目を合わせ頷き、走って食堂へ向かった




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ーーーーバァン!!


食堂のドアを大きく開け、俺たちは食堂に入った


「名無しさん!!居るか!?」


俺は声を上げる


だが、見渡す限り彼女の姿は見当たらない

....ここにもいないのか.....?


「いないみたいだな....」


隣でライナーが呟く


すると後ろでクリスタが何かに気づいたように声を上げた


「あ、あれなんでしょう?」

クリスタが真ん中のテーブルの方に向かっていく

周りの女子たちがそれについていった


「僕たちもちょっと行ってみようよ」

「あ、ああ...」



近づくにつれ床に何か見えてきた


あれは...布?




先頭に立っていたクリスタが足を止めた



そして言った







「誰.....?」






後ろにいた女子も目を見開いていた


俺たちも駆け寄る






そこにいたのは.....







「ZZZZ」




布に包まれた、一人の小さな女の子だった

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