レオクラ♀

□クラピカちゃんとレオリオさんの、子作り大作戦☆3
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(^ω^)続・パーリィー編(^ω^)


















「…………」


コツコツコツコツコツ…



先ほどから絶え間無く辺りに響いているこの音。


その正体はズバリ、レオリオの貧乏揺すりの音、である。


壁に背中を寄せる様にしてもたれかかって、胸の前で腕を組んだレオリオは、その長い足をせわしなく揺すってフロアーに革靴の先を押し付けていた。

ちなみにその鋭い眼光は、目の前数メートル先の距離にいる男女2人(主に男の方)に向けられている。


「……」


――目で人を殺す。

それはあくまでも比喩表現の一つとして使われている言い回しだったが、今のレオリオの視線には、その言葉が真実なのでは無いかと疑う程の迫力があった。


(なんだよ、クラピカのやつ。普段俺相手には愛想笑いのひとつもしねぇくせして!)


可愛らしいドレスに身を包んだクラピカは、相手の男と楽しげに談笑をしているところだった。



少なくとも、レオリオの目にはそう映ってしまう。


こうして遠くから見ると、周りの男たちも遠巻きにクラピカの方を気にしている事がよく分かった。

しかも、相手の女性が目の前にいるにも関わらず、だ。


(ったく…、どいつもこいつも、あいつの見た目に騙されやがって)


クラピカは確かに見た目は可愛らしいが、性格は捻くれ者の変わり者で、長年付き合いのある自分でも未だに手を焼いてしまう位なのだ。


(お前らの手に負える相手じゃねぇんだ。あいつには俺じゃねぇと。俺ならもっと…)


そこまで考えてから、レオリオは深いため息を付いた。




――自分なら…、何だというのだ?




出会ってから数年。
未だに告白すら出来ていない臆病者の自分と彼らの、どこに違いがある?


(同じだ…)


男として意識されていない、という時点で、彼女にとっては。

周りに大勢いる男の中の1人のまま、なのだろう。



「……はぁ」


考えれば考える程、鬱になって来た。


(俺らしくもねぇ…)


いつもなら、勢いで突っ走るのが自分流だというのに。


(完全に振り回されてんな…)


額を押さえて、眉間を指先でグリグリとこねくり回す。


と、その時、不意にふんわりと、香水の良い香りが揺れた。

顔を上げたレオリオの目に、ウェーブを描いた長い金髪が目に入ってくる。


(ん…?)


不思議に思い、そのまま視線を上げていくと…。






どーーん。






次の瞬間彼の目に飛び込んで来たのは、豊かな二つの膨らみだった。

それは紫色のカクテルドレスの胸元で、はち切れんばかりに実っている。


(おお、すっげぇ巨乳…)


悩み事の最中ではあるが、見られる物は素直に見させてもらうのがレオリオ流である。


男の悲しいサガというやつだ。


「ねぇ、貴方、1人なんでしょう?」


巨乳の持ち主にそう声をかけられて、レオリオは我に帰った。

いつまでも胸に見惚れている場合ではない。



慌てて顔を上げて、声の主と目を合わせる。


そこにいたのは、口元のホクロがチャーミングな女性だった。

見覚えは、当然ながらない。


「え?俺?」


「そうそう、貴方。さっきから見てたけど、1人なんでしょう?良かったら私と踊らない?」


そう言うなり、女はレオリオの腕を取り、大胆にもそこに胸元をギュウギュウと押し付けて来た。


誘惑されている…のは明らかだ。


「悪りぃけど俺、連れいるから」


こういう相手には、はっきりと意思表示をしておくが吉、だ。

レオリオは迷いの無い言葉でそう返したが、女はなかなかしぶとかった。


「そうなの?まぁ、それでも構わないわ。どうせ今は暇なんでしょう?」


「……」


ギュウギュウ。



どうにも落ち着かない。

レオリオは失礼にならない程度の強さで、女性の肩を押した。


「すまねぇが、見た目に反して結構忙しいんだ。悪りぃな。他をあたってくれ」


そう言いながらもふと、先ほどクラピカがいた方向に視線をやると…。


(!あいつ…)


そこに2人の姿はなくなっていた。


(どこに行ったんだ!?)


一瞬焦って辺りを見回すと、意外な場所に、2人の姿を見つけることができた。


(なっ……)


ダンスフロアーの上だ。



クラピカと相手の男の2人は、音楽に合わせてダンスを踊っている所だった。



とはいっても、クラピカは当然ながらエスコートされっぱなしの状態のようだ。

ギクシャクとした動きで、だが一応は男性の肩に手を回している。

相手の男も男で、その手をクラピカの細い腰の辺りに回していた。

その顔は、遠目から見ても分かるほどに、だらしなくやに下がっている。



それを目にした瞬間、レオリオは自身の頭にかぁぁっと血が登るのを感じた。


「クラピカっ!」


近くにいた女性の事も忘れ、大きな声で彼女の名前を呼びながら、その場に駆け寄って行く。

それに気づいた2人が、ハッとした様子で顔を上げた。


「…クラピカさん、こちらの男性はどなたですか?」


相手の男は、先ほど彼がクラピカを誘った時に顔を合わせているにも関わらず、いかにも初対面な様子で不信げに眉をしかめさせた。


「私の知り合いだ。レオリオ、どうしたのだ?」


「……」


レオリオは苛立ちを隠せないまま、男の肩に伸ばされていたクラピカの細い腕を掴んで、自分の方へと引き寄せた。


「なっ…」


バランスを崩したクラピカの身体が、ふわりと寄りかかってくるのを、しっかりと受け止める。


「な、何をするんだ、君は!」


男はあからさまに不機嫌な顔をして、声を上げた。


「悪りぃけど、あんたの番は終わりだ。こいつは今から俺と踊るんだよ」


「!」


クラピカがはっと目を見開いて、すぐに片方の手で胸を押してくる。


「な、なにを言っているっ!レオリオ…っ、ふざけるのもいい加減にしないか…っ!」


「ふざけてなんかねぇよ。行くぞ、クラピカ」


レオリオはクラピカの手を取ると、男に背を向けてズンズンと歩き出した。

背後から何か罵るような言葉が聞こえて来たが、完全に無視を決め込んでしまう。


「っ、レオリオ…っ!」


「……」


クラピカが並んで歩みを進めながらも、怒ったように声をかけてくる。


「レオリオ、どうしてこんな事をするのだ…っ?」


「……」


「レオリオっ…!聞いているのかっ?」


「……」


「何故こんな真似をしたのかと聞いているのだ!」


男から大分距離をとった所でようやく、レオリオはその足を止めた。


「…あのなっ」


そこで改めて、目の前のクラピカを見下ろすようにして声を張り上げる。


「お前、あいつの目ぇ見ただろ?あの男、下心丸出しじゃねぇか!」


「…!」


「あんな奴に騙されてホイホイ付いて行って…、挙げ句の果てには仲良くダンスか?馬鹿じゃねぇの!」


クラピカがその白い頬を、怒りか、はたまた羞恥心でか、かぁぁっと赤く染め上げた。

そして、強い視線でキッと睨みつけてくる。


「…貴様のような欲望に忠実な男に言われたくは無いなっ…!…そちらこそ、いかにもお前好みの女と楽しそうに話をしていたではないか!」


「…へ?」


レオリオはそこで、一瞬だけ思考をストップさせた。



(俺好みの女…って…)


そこでようやく、先ほど声をかけて来た巨乳女(ちなみに顔は覚えていない)の事を思い出した。


「何だよお前、見てたのかよ…」


意外だ。
彼女は相手の男との談笑に夢中になっているとばかり思っていたから。

そう指摘すると、クラピカはますます頬を赤らめて、さっと目をそらした。


「…っ、べ、別に、意識して見ていたわけでは無い。周りを見渡した時に、たまたま目に入っただけだ。勘違いするな」


「……ふーん」


レオリオはなんとなく覇気を削がれて、小さくため息をついた。


「…つぅか、別にあれはそんなんじゃねぇよ。あっちから急に声をかけてきただけだ。マトモに話もしてねぇよ」


そう言うと、クラピカも怒りで真っ赤にしていた表情を落ち着けて、長いまつげを伏せた。

小さくため息をついている。


そしてようやく、お互いのかっかしていた心が落ち着いた頃…。


「……レオリオ」


小さな声で、クラピカが声をかけてきた。


「どうした?」


彼女らしくない、頼りなげな様子に、レオリオは思わずに心配になってその顔を覗き込んでしまう。


「今更かもしれないが…。もしかしたら私は、こういったパーティーには向いていない類の人間なのかもしれない」


「……」


しばらく間をおいてから、レオリオはぶっと吹き出した。


「あのなぁ…。そんなの、来る前から分かってた事だろうが。んっっっとに今更だな」


「っ、…う、うるさい!だから前もって今更かもしれないと前置きをしただろう!」


ぽこぽこと胸を叩かれて、レオリオはますます笑ってしまう。


「んで?なーんでそう思ったんだ?」


よしよしと頭を撫でながら尋ねてやると、クラピカは少しだけ悔しそうに小さな唇を噛んだあと、再び口を開いた。


「何だかとっても…、気疲れしてしまったのだ」


確かにクラピカは、早くもどこかぐったりしている様に見える。


「気疲れ?…その割にはあの野郎と楽しそうに話してたじゃねぇかよ」


レオリオの脳裏に先ほどの2人の姿がよぎって、無意識のうちに再びイライラしてしまう。


「馬鹿者。君は今までに社交辞令と言う言葉を聞いた事が無いのか?」


「社交辞令…」


ならばもしや、あの笑顔も?

あの男に向けられた笑顔は、彼女なりの気遣いの一種で、それ以上の感情は何も込められていなかったのだろうか?


そう考えて、少しだけホッとしてしまう。



ちょうどその時、今まで絶え間無く流れていた音楽が途切れた。


(ん?)


不思議に思った直後。


すぐに、新しい演奏が始まった。


ピアノの伴奏で始まったその曲は、先ほどまで流れていたアップテンポな物とは違い、しっとりとした曲調のバラードだった。

いつの間にかステージの中央に立っていた歌手らしき女性が、メゾソプラノの声を響かせて歌い始めている。


周りの客たちは、その曲調に合わせて、ゆっくりと踊り始めた。


(やべぇ。俺たち浮いちまってんな…)


このままこの場にぼーっと突っ立っているわけにもいかないだろう。


レオリオはすぐにクラピカの手を取ると、会場の端に向かって歩き出そうとした、が…。


「……」


ふと思いたち、クラピカの顔を覗き込んだ。


「…どうした?」


愛らしく大きな瞳が、不思議そうに見上げてくる。
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