レオクラ♀

□クラピカちゃんとレオリオさんの、子作り大作戦☆2
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こないだの続きですよ(*´∀`*)

えぶりばでー れっつえんじょいぱーりぃーたーいむ!








☆クラピカちゃんとレオリオさんの、子作り大作戦☆第二話














――場違い。





レオリオは今、この言葉の意味を身を持って噛み締めている所だった。


シャンデリアがあちこちに飾られた煌びやかなパーティ会場では、色とりどりのドレスを着た女性達と、タキシードでバッチリ決めた男性達が楽しげに会話を交える様子が目に入ってくる。

それに加えて、奥の方では、バイオリンやピアノによる生演奏が披露され、周りの人間達はリズムに合わせて優雅にダンスを踊っていた。


「……」


そしてここ、会場の入り口では。

それらに圧倒されたレオリオが、口を半開きにさせたまま突っ立っているところだった。


この落差、お分かりいただけるだろうか。


(はっ…、入れねぇ…っっ…)


まるで入り口の敷居に、見えないバリアーでも張られているかのように感じてしまう。

上流階級の人間が集まるパーティだとは聞いていたが、ここまでだとは。

ハンター資格を持つ医者とは言え、あくまでも一介の市民でしかないレオリオにとっては、まさに別世界の人間達が集まっている場所と言ってもよかった。


(勢いで来るとは言っちまったが…)


いつもの癖で、ガシガシと頭を掻き毟りそうになる直前で、レオリオは思いとどまった。


(いけねぇ…っ)


美容院でセットに1時間近くかかった髪型を早くも乱してどうする。


(ともかく落ち着け。こういう時は深呼吸だ)


すーはー
すーはー



隣をするりと通り抜けていく人間達が、自分に対して好奇の視線を向けるのを感じたが、レオリオはおかまいなしに深い呼吸を繰り返した。


なにせ今夜のこのパーティー会場は、自分にとって特別な意味を持つ場所だったのだ。


戦いの場、と言ってもいいだろう。


そういう意味では、これから戦場に赴く兵士達となんら代わりの無い状況だった。

初っ端から気圧されている場合では無いのだ。


すー、はー。


(…よっしゃ!行くぞ!)


と、気合と共に一歩踏み出そうとしたところで…。


「あら、レオリオ。もう来てたのね」


背後から声をかけられた。

女性らしく柔らかい声の響き。
それに、どこか人を安心させるような言葉遣いを耳にして、レオリオはホッと一息ついた。

声の主が誰かは分かっている。


「よう、センリツ。こうやって直に会うのは久しぶりだな」


顔を振り向かせながらそう言うと、そこには、クラピカがマフィア絡みで働いていた頃の仕事仲間だった女性、センリツの姿があった。

クラピカが危険な仕事から手を引いた後も、2人は友人同士として仲良くやっているようだ。

そしてレオリオも、過去に彼女と連絡先を交換した仲で、当時はクラピカの事で何かと世話になった覚えがある。

…もちろん、今もクラピカと連絡がつかない時は、真っ先に頼りにしてしまう相手だった。


「ふふ、本当ね。久しぶりに会えて嬉しいわ」


そう言って柔らかい微笑みを浮かべるセンリツに、レオリオの心は自然と落ち着きを取り戻していた。


「今夜は随分とめかし込んでのご登場だな。そのドレス、よく似合ってるぜ」


「あら、そう?この色は少し目立ち過ぎるかとも思ったのだけど」


センリツはパーティーに合わせてドレスを身にまとっていた。

全体的にフンワリとしたシルエットのそれは、所謂シフォンドレスというやつだ。

明るい水色の生地が、シルクの艶によく映えてキラキラと光っている。


「そんな事ねぇよ。この派手な会場にはそれ位の色がちょうど合ってていいんじゃねぇのか?今夜のあんた、いい女だぜ」


レオリオがそう言うと、センリツはほんの少し照れた様なはにかみ笑顔を浮かべた。

その何とも微笑ましい表情に、レオリオもつられて微笑んでしまう。


「ありがとう。貴方もとっても素敵よ。タキシードが似合ってるわ」


まるでお返しとばかりにそう言葉をかけられて、レオリオは照れ臭さのあまり、ごまかす様に頬をぽりぽりと掻いてしまう。


「そうか?こんな畏まったもん着たの生まれて初めてだからな…。動き辛くてしょうがねぇや」


貸衣装屋に数あるタキシードの中でも、特に値の張るブランド物を借りて来たお陰で、着心地は悪くはなかったが、やはり普段着慣れていないせいか、やたらと肩に力が入ってしまうのだ。

それに、髪型も…。


「はじめに見たとき、一瞬誰か分からなかったわ。もっとも、背丈と心音ですぐに貴方と分かったのだけれど」


「はは…。気取ってんだろ?」


これまた、普段は足を踏み入れもしない様な高級美容院で、髪の毛を一からセットしてもらったのだ。

おかげで、レオリオのトレードマークであるツンツンヘアーは、丁寧に後ろへと撫でつけられたオールバックに変身を遂げていた。


「いいえ、本当によく似合ってる。ハンサム度が増したわね」


ニッコリと微笑んだセンリツにそう言われて、レオリオは柄にもなく真っ赤になってしまう。


やはり、女性に褒められると悪い気はしない物だ。

照れ臭さに負けたレオリオは、そこでわざと話題を変えるように、先ほどから気になっていた事に言及した。


「…ところで、クラピカはどこに行ったんだ?もう中に入っちまってんのか?」


キョロキョロと会場の中を見渡してみたが、それらしき姿は見受けられなかった。


「ああ、クラピカね。ここに着く前に連絡をいれた時には、もう少し時間がかかるかもしれないと言っていたわ。何だかやけに焦っているような口調だったけれど」


センリツがそう言いながらも、心配そうに眉をしかめた。

それにつられて、レオリオまで心配になってくる。


(まさかあいつ、ここに着く前にナンパでもされてどっかに連れ込まれてんじゃねぇだろうな?)


いや、まさか。

クラピカは見た目こそ少女の様に可憐だが、腕っ節はそこいらの男が数人束になっても敵わない程に強いのだ。

そういう意味では心配する必要はないだろうと理性ではわかっていたが、やはり気になってしまう。

だが、いつまでもこうやって入り口でうろついている訳にもいかないだろう。


「…ともかく、ここでぼうっとしててもしょうがねぇ。中に入るか?」


「そうね、そうしようかしら…」


レオリオがさっと手を差のべると、センリツはニッコリ笑ってその手をとった。

そして2人して会場に歩みを進めようとした、その時。


「すまない、待たせたな…っ」


聞き覚えのある声が背後から耳に飛び込んできた。

間違いない、クラピカだ。


「おめーなぁ、時間厳守だ何だって小うるさく言っといて、肝心のおめーが遅れてどうす…」


からかい半分にそう言いながら振り返ったレオリオは、


その場で固まってしまった。


「…す、すまなかったな。ドレスを選ぶのに予想外の時間がかかってしまって…」


クラピカはここまで駆け足で来たのか、軽く胸元を弾ませていた。

その綺麗な金髪はアップに整えられて、真っ白な首筋や胸元が剥き出しになっている。

真紅のパーティドレスの胸元には、大き目のリボンが添えられており、膝の辺りまであるスカートは、たっぷりのフリルで飾られていた。

よく見ると、薄っすらとだが化粧もしているようだ。

形の良い二重まぶたを暖かみのある淡いブラウンで彩って、長いまつげにはマスカラ、それに愛らしい唇は、チェリーレッドのリップで艶艶と光っていた。


「……っ…」


そんなクラピカの姿を目にして、レオリオは息を止めてしまう。


思考は完全に停止状態だ。


普段から可愛らしい顔立ちをしているクラピカが、こんな風に化粧をして、髪型を変えて、ドレスを着て…。

まるで生きたお人形さんのような姿になって、今自分の目の前にいる事。


その事が信じられない。


「まあ、クラピカ!とっても綺麗よ!可愛くて素敵!ねぇ、レオリオもそう思わない?」


隣のセンリツがきゃぴきゃぴはしゃいでもしょうがないほどに、クラピカは可愛らしく、そして美しかった。


「あ、…ああ…」


半ば無意識のまま、こくこくと頷いてしまう。

クラピカがほんの少しだけ恥ずかしそうに、その目元を赤らめたのが分かって、どきりとする。


(くそ…、し、しっかりしろ、俺!)


格好がつかないにもほどがある。

こんな所で間抜けヅラを浮かべてぼーっとしているわけにはいかないのに。

だがクラピカのドレス姿は、レオリオにとってそれ程衝撃的だったのだ。


(こういう時はもっと、デキる男を気取ってスマートにだな…)


頭の中では冷静な自分が、うるさくお喋りを続けているが、それに耳を貸す余裕は今のレオリオにはなかった。

先ほど、センリツの時は意識をせずとも口をついてでた褒め言葉も、何故か上手く出てきてはくれなかった。

ただひたすら、クラピカをぼーっと見つめる事しか出来ない木偶の坊と化す。
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