「なぁクラピカ…、ここんとこ最近ずっと考えてたんだけどな」
朝食のトーストをぱくつきながら、レオリオが唐突に言った。
「そろそろ俺たち、子供…つくらねぇか?」
シアワセ家族計画
※クラピカ女の子です。
旦那様はレオリオ(医者。近所の病院勤め中)
「ぇ…?」
クラピカは、トーストにイチゴジャムをペタペタと塗りたくっていた手を止め、その大きな瞳をパチパチとしばたかせた。
「レオリオ、今…」
「…あーーっ、ちゃんと聞いとけよー!結構恥ずかしいんだかんな…」
レオリオは頬を少しだけ赤らめ、グシャグシャと頭を掻き毟る。
いかにも照れてますー!といった感じだ。
そんな彼の様子を目にして、クラピカまで恥ずかしくなってしまう。
もちろん、彼の言葉を聞き逃していたわけではない。
「…だからさ、俺たち結婚してもう一年経つだろ?ここんとこ俺の仕事も順調だし、そろそろいいんじゃねぇかと思ってよ」
「……」
「……」
クラピカは白い頬と目元をほんのり赤らめて黙り込んでいる。
「…クラピカ、おい。…なんとか言えよ。俺ひとりバカみてぇじゃねーか…」
レオリオは更に赤くなって顔をそむけた。
こんな風に照れる彼は珍しい。
よほどの決意で先ほどの言葉を口にしたのだろう。
「……その、……レオリオ」
「んぁ?」
「……君は、本当に私との子供が…、欲しいと思ってくれているのか…?」
クラピカは頬を赤らめながらもどこか遠慮がちにそんな事を言ってくるから。
レオリオは小さく笑って立ち上がった。
そして向かいの席に座っていたクラピカを、背後から包み込むようにして抱き締める。
「…ああ。欲しいぜ、クラピカと俺の子供が」
「……」
クラピカの細い方は小刻みに震えている。
「お前は?…俺との子供、欲しくねぇか?」
「……」
ぴくり、と肩が揺れて。
「………欲しい、のだ…。…レオリオとの子供…」
小さな声で、ひかえめに呟かれた。
レオリオは満面の笑みを浮かべ、次の瞬間、椅子に腰掛けていたクラピカの身体をヒョイっと抱き上げた。
「っレオリオっ?」
「…ほんじゃまぁ、早速子作りといきますか♩」
かぁぁぁっっ
「っば、ばかものっっ!ま、まだ朝食の途中ではないか!お、降ろせっ、降ろすのだっ!」
ポカポカと胸を叩かれたが、レオリオはニヤついた顔を崩さずに、クラピカを抱っこしたまま寝室へとズンズン歩いて行く。
クラピカは最初こそ抵抗していたが、しばらくするとそれが無駄だと悟ったのか、胸を叩く手を止めた。
本当は、ちっとも嫌ではなかったから。
毎晩のように繰り返されるあの行為は、一年経った今でもまだ慣れないし、恥ずかしいけれど。
「…レオリオ…」
「ん?」
ぎゅ、とクラピカがレオリオの首にしがみついた。
「……ありがとう…」
それはとても小さな、消え入りそうな程に小さな声だった。
(ありがとう、私との子供が欲しいと言ってくれて…)
それだけじゃない。
レオリオの与えてくれる日々そのものが、クラピカにとっては何よりも嬉しいプレゼントだった。
何度ありがとうと言っても足りない位に、幸せで…。
「俺の方こそお前にありがとう、だぜ?」
クラピカはキョトン、と目を見開かせる。
「ありがとな、クラピカ。いっつも俺の側にいてくれて。…俺いまスッゲー幸せだ」
くすっ
「…お互い様なのだよ」
クスクスと笑いあって、軽いキスを交わし合う。
2人が家族になってから一年。
平凡で、でも砂糖菓子の様に甘くて幸せな毎日…。
そしてこれからは…
「お前と俺と、子供の3人で。もっと幸せになろうな?」
レオリオの優しい声が響く。
「……うん」
目元を赤く染めて頷いたクラピカの唇に、もう一度だけ優しいキスを落とし、レオリオは寝室の扉を開けた。
2人だけの、とびっきり甘い時間がこれから始まる…。
end