レオクラ♀
□幸せの方程式
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大好きな君と、ずっと一緒に…
◇幸せの方程式◇
バタバタバタ…と騒がしく廊下を駆ける足音が遠くから聞こえてきて、夕飯の支度をしていたクラピカは、手を止めてクスっと笑ってしまう。
(…まったく、そんなに急がなくとも私は逃げ出したりしないというのに…)
騒音の主はもちろん、レオリオだ。
毎日の勤めが終わると、矢も盾もたまらず一目散に家へと帰ってくるのが彼の日課だった。
そしてそれは何も今に始まった事ではなく、2人が同棲を始めた半年前から毎日のように繰り返されている日常だ。
近所迷惑になるからやめろと何度注意しても治らないので、クラピカもいい加減諦めてしまった。
(まったく…)
クラピカは心の中でもう一度ため息をついたが、その口元は優しげに緩んでいる。
玉葱の皮を剥いていた手を止め、軽く水で洗い流す。
そろそろ彼が勢いよく扉を開け、飛び込んでくる頃合だな…と思っていると。
ガチャッ!!バタバタっ!
「クラピカぁぁーーー!!ただいまーー!」
予想的中。
クラピカは再びくすくすと笑いながら、パタパタとスリッパの音を響かせて玄関の方へ歩いていった。
レオリオはこちらに気がつくと履いていた靴を無造作に脱ぎ捨てて、クラピカの方へとダッシュで向かってくる。
「クラピカ、ただいま!」
その少年のような笑顔に、クラピカは微笑んで
「おかえり、レオリオ」
そんな彼を出迎えた。
すぐに彼の腕の中に出迎えられて、ギュッと抱きしめられる。
ここまでが毎日欠かさず行われている、もはや儀式のようなものだった。
「…はぁ、会いたかった…」
と呟かれ、クラピカは気恥ずかしさから白い耳元をポッと赤らめてしまった。
「…今朝会ったばかりではないか」
だが内心の動揺を悟られたくなくてそんな風に憎まれ口をたたくと、レオリオは少し拗ねた表情を浮かべて肩口に顔を埋めてきた。
「…だってよー、かれこれ10時間もお前の顔見てなかったんだぜ?長ぇよー」
「…馬鹿者。それが普通だ。いい加減慣れろというのに」
「クラピカつめてー!俺はこんなに愛してるってのによぉ〜!つめてぇつめてぇつめてぇーー!」
「ばっ、ばか、でかい図体をして暴れるな!近所迷惑だろう!」
レオリオは普段は実年齢にそぐわない程に大人びた一面を見せる男だったが、時折こうして子供のように甘えてくることがある。
(…まぁそこが可愛いといえば可愛いのだが…)
とコッソリ思っているなんてことは、本人には絶対に秘密だったが。
「へいへい。…まぁ今夜は俺、スッゲーご機嫌だから許してやるよ」
と言って、レオリオは鼻歌交じりに脱いだ靴を揃えた。
これは同棲してからクラピカが躾けた事だ。
毎度のように靴を脱ぎ散らかすレオリオに「ちゃんと靴を揃えないと3日間キス禁止」と言ったところ、あっという間に悪癖が直ってしまったのだ。
ちなみにこの手はあらゆるシチュエーションで使用可能である。
(簡単なものだな…)
と内心クラピカがほくそえんでいる事は彼の知るところではなかったが。
「何かいい事でもあったのか?」
2人で並んでリビングへの廊下を歩きながら、クラピカは隣のレオリオを見上げ、そう尋ねた。
「んーー、後で教えてやるよ♪」
レオリオはニコニコ笑いながらそう返し、クラピカの唇に軽いキスを落とした。
「んっ…」
チュッと軽く吸って、離れていく。
「よっしゃー、クラピカの唇もーらいっ」
「……まったく君は、油断も隙もあった物ではないな…」
クラピカは白い頬をポッと上気させ、悔しげに呟くのだった。