レオクラ♂

□Let me be yours.
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苦しくて、息が出来ないほどに切なくて。




Let me be yours.








クラピカはそっと、手にしていた花束を墓石の前に置いた。


そして、その細い指で優しく優しく、なぞるように墓石の表面をなでる。


その手つきはまるで、愛しい人を撫でるときのそれだ。


穏やかな表情も慈しむような微笑みも、すべてが目の前の誰かに注がれているように思える。



「……君がいなくなってから、もう一年が経ったのだよ、レオリオ」



小さな声で、クラピカはそっと囁いた。


それは風の音にすらかき消されそうなほどに頼りなく、小さな声だ。



「…不思議なものだな。今でも朝起きると、君の声が聞こえてくるような気がする。…おはようと、まるであの頃のように…」



レオリオの生まれ故郷であるこの街は、海が近いせいか、あちこちからカモメの鳴く声が潮風とともにやってくる。


クラピカの額に張り付いた前髪が、風のせいでふわりと舞い上がり、彼の端正な顔立ちをあらわにした。



「…君が、まだ私の側にいるような気がするのだよ、レオリオ」



クラピカの顔に浮かんだ穏やかな微笑みが、不意にくしゃりとゆがんだ。



「…君はもういないのに」



唇が震え、涙が一本、白い頬を伝い落ちる。



「…もうどこにも、いないのに……」



両手で顔をおさえ、クラピカはその場にしゃがみ込んだ。











「……」



キルアは、手に持っていた花束を、くしゃりと握りつぶした。


すぐ目の前に、しゃがみこんだクラピカの震える背中がある。


あと数歩前に進めば、彼に届く。


わかってはいたが、キルアはそれ以上歩みを進めることが出来なかった。





かけたい言葉なら、いくらでもある。



『泣くなよ、クラピカ』



『あんたのそんな顔、見たくないんだ』



『ほら、いつもみたいに笑ってみせてよ。あいつに見せてた笑顔をオレにも見せて』




この一年間、最愛の人を失って苦しむクラピカを見てきた。


側で、ずっと。



言葉はかけられなかったけれど、目をそらすこともしなかった。



ずっとずっと、クラピカだけを見てた。



いや、この一年間だけじゃない。


出会ってから8年の間、ずっと彼だけを追い続けてきた。


彼が自分のことを見ないのはわかりきっていたことだけれど。


見れば見るほど、胸の奥に消えない痛みを残していくだけだと知っていたけれど。


それでも、目を離すことは出来なかった。




好きだから。




クラピカがどうしようもなく綺麗に見えて、目をそらすことなんて思いつきもしなかったから。





だからずっと、見てた。





『いつまでそうやって泣いてるつもりなんだ?あんたはもう充分苦しんだ。もういいだろ?もう、幸せになってもいい頃だろ?』


グシャリ、、とキルアのスニーカーが地面に落ちた花束を踏みつぶす。

伝えられない言葉と共に、何度も、何度も。


先ほどまであれほど美しく咲き誇っていた花も、こうしてつぶしてしまえば…




あっけなく、その光を失う。




――オレじゃ、あんたの支えにはなれないの?




届かない言葉。




――オレじゃ、あいつの代わりには……なれない?




受け入れられることのない想い。




「……っ…苦しいんだ、レオリオ…、…っくるしくて、くるしくて……」




「苦しいよ、…死んでまであんたを苦しめてるあいつが、憎い…。…憎くて、苦しくて…」




息が、できない。








I can't breath because of you.
Sometimes you make me smile but almost all the time you make me cry.

Please tell me you won't love me and you have no chance at all so that I can compleatly forget about you.

Please don't let me have my hope to be with you someday in the future.

Just let me go or let me be yours.





出会ってから8年後の話

クラピカ24歳
キルア20歳


レオリオは1年前に亡くなっていて、クラピカは未亡人です。


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