レオクラ♂

□風呂場×教訓×愛しい君
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◇風呂場×教訓×愛しい君◇






「…ふぅ」


クラピカは深い溜息をつきながら、温かい湯の中に顎まで浸かっていた。


白い湯気が天井までゆっくりと立ち昇って行く様子を、ぼんやりと見つめる。

ここは彼の恋人であるレオリオのアパートの、シャワールームだ。


まだ早朝なので、窓からは朝日が差し込んでいる。

先日、最近抱えていた大きな仕事が終わり、クラピカは休暇を利用してレオリオの街へとやって来た。

…というより、やって"こさせられた"と言うべきか。


と言うのも、レオリオがここ最近毎晩のように「次の休みはいつだ?次はいつ会えるんだ?」
と電話で尋ねてきていたからだ。


まぁ、それも仕方のない事なのかもしれない。
今回こうして会うのも、実に3ヶ月ぶりの事だったのだ。

クラピカは現在ノストラードの片腕として毎日忙しく働いていたし(というより、実際のところ、彼がファミリーを仕切っているようなものだった)レオリオもレオリオで医大生として勉強や実習で寝る間も惜しむ毎日なのだ。

そんな2人が頻繁に会えようはずもない。
第一、2人の間を隔てる距離の壁も分厚かった。


飛行船で丸一日。


クラピカがレオリオの住むこの街までやって来る際にかかる所要時間だ。

だがそんな疲れも、空港で嬉しそうに手を振るレオリオの姿を見るだけで吹っ飛んでしまう。


彼は毎回会う度に本当に屈託のない笑顔で笑い、我慢出来ないとばかりに抱き締めてくるのだ。

普段なら「ここが何処だか分かっているのか!」と言ってぶん殴るところだったが、その時ばかりはクラピカも多めに見てやる事にしている。

だが…


(……疲れたのだよ…さすがに)


口までお湯につけて、ブクブクと空気を吐き出す。

仕事の疲れが溜まっていたのも確かだったが、この身体の奥に残る、鈍い気だるさはそのせいでは決してない。


そう、これは…


(…すべて、あの男のせいだ…)


昨晩の事を思い出して、クラピカは既に赤くなっていた頬を更に赤らめた。


「クラピカ…」


耳元で幾度となく囁かれたレオリオの甘い声が蘇ってくる。

細い指先で唇に触れると、何となくまだ彼の唇の感触が残っているような気さえする。


正直なところ、昨晩は結局何度されたのかすら覚えていなかった。


たっぷり時間をかけて、身体中をレオリオの大きな手や熱い舌で蹂躙され、身体の奥に何度も何度も彼の熱を受け止めた。

耳元で卑猥な言葉をたくさん囁かれ、恥ずかしい格好も一杯させられ、しかもあられもない声もあげてしまった、ような気がする。

結局最後は気を失ってしまったようで、先ほど目を覚ましたらすっかり朝になっていたというわけだ。

クラピカはすぐ隣で幸せそうなアホ面を浮かべて眠るレオリオを起こさないように、こっそり寝室を出てシャワールームへとやって来たのだ。


「…っぅう…」


羞恥のあまり、クラピカは鼻までお湯に顔を沈めた。


ぶくぶくぶく…


(…このまま消えてしまいたい…)


よりにもよって、レオリオの前であんな姿を晒してしまうなんて。
いや、何もそれは今回に限ったことではないのだが…。


(どうしてしまったのだろうな、私は…)


頬が熱いのは、何も湯温のせいだけではないだろう。

とにかく、少し1人になって冷静さを取り戻したかった。


のだが……


ガラッ


「クラピカぁーっ!ここかっ!?」


遠慮なく扉が開き、レオリオが飛び込んで来た。


「っなっ…!!」


クラピカは鼻先まで湯に浸かっていた顔をあげて、呆然とレオリオを見つめてしまう。


「おっ、ここにいたか。…ったく、心配したんだぜ?目ぇ覚ましたらおめーいねぇしよ!まさか勝手に帰っちまったんじゃねぇかって」


とベラベラ喋りながらも、何故か履いていたトランクスを脚から引き抜き、素っ裸になって湯船の方にやってくる。


「な…、な…」


「おいクラピカ、もーちょい後ろに下がってくれよ。入れねぇじゃねぇか」


レオリオが湯に足をつけてきたところで、クラピカはやっと我に帰った。


「なっ、何をしているのだ、貴様はっ」


「へ?何って、風呂に浸かろうとしてんだろが。どっからどう見ても」


「馬鹿者!そんなもの見ればわかる!…っ私が言いたいのは、何故今それをする必要があるのかということだっっ!」


レオリオは人の話を聞いているのかいないのか、強引に向かい側に浸かって来た。

それでなくてもデカイ図体をしたレオリオだ。いくらクラピカが女のコのように華奢だからと言って、狭い湯船に2人で浸かるのはかなり無理がある。


「なーに言ってんだよ?クラピカちゃんが1人じゃサミシーだろうから、やっさしー彼氏の俺が気をきかせてやったんだろうが」


ニヤニヤ。


「…っ……心の底から、頼んでいないのだよ…っっ…」


優雅なバスタイムを邪魔されて、クラピカは深い溜息をついた。

と、そこで改めて今の状況を思い出し、すでに火照った頬を更にかぁっと赤くする。
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