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□五色・牛島
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白鳥沢学園3年、司馬みさお。
ごく普通の女子高生でクラス内では地味な部類に入ると思う。と自負しているが、それは私自身の話である。
私にはもう一つ、肩書きとも言えるモノがある。
「牛島さんが何故あなたに執着するのか分かりません!」
「・・・なに、急に・・・てか誰・・・」
いつもの放課後、校門から一歩出ようとしたところでそいつは何の前触れもなく脇の茂みから飛び出してきた。
そして開口一番がこれだ。
私を優に越す身長と見慣れたジャージのおかげで、彼がこの高校のバレー部に所属していることは明らかなのだが・・・
だけど分からない、本当に誰。
とりあえず思ったことを言ってみる。
「・・・頭にめっちゃ葉っぱついてるよ」
「そんなことはどうでもいいんです!!」
「あ、そう」
とか言いつつ頭にさりげなく手をやる男の子。前髪が気になるのかな?おかっぱみたいな髪型が特徴的だが、なかなか可愛い顔立ちをしている。
しかしその表情は険しい。こちらに敵意満々だ。
・・・もしかして私、嫌われてる?
牛島さんとか言ってたから、まーた牛島くん関連なんだろうけど。
「俺は一年の五色工です。白鳥沢男子バレー部のスタメンでポジションはWS!そして未来の白鳥沢の大エースになる男だ!」
「へー、私は司馬・・・「そんなこと知っています!」・・・そ、そっか」
最後まで喋らせなさいよ。まぁ1年生らしいし、ここは年上の余裕で目を瞑ってやろう。
「えーっと、五色くん?牛島くんが私に執着しているとかどうとか言ってたけど、私たちの関係知ってる?」
「知っていますよ!先輩方は恋人同士なんですよね。でも俺には納得できない。牛島さんに先輩は似合いません!」
夕日をバックに五色君は仁王立ちでこちらを睨んでくる。
この野郎、好き放題言ってくれちゃって。久しぶりにイラっときた。牛島くんちゃんと後輩に指導してよね。今度会った時そう言おうと決める。
そう、私は確かに彼の言う牛島若利の彼女だ。
あの牛若、牛島若利。白鳥沢の超高級エース。私の持つ肩書きとも呼べるモノがこれ。
なんで付き合っているのかはまた別の話。けれど私たちの関係は比較的良好だと思う。別れるつもりは毛頭ない。
「執着されるほどの強さがあなたにあるんですか」
「強さとか執着とか、よく分からないんだけど・・・五色君、私たちに別れて欲しいの?」
「はい!」
「元気よく返事すんな!」
「ブッ!!」
勢いよくその顔にカバンを投げつける。白鳥沢のスタメンがどうと知るもんか。五色君は頭一つ分私より背が高いが遠慮なしに叩き込まれる姿を見ると少しスッキリする。
「生意気な1年坊主ね!私に突っかかる暇があるなら練習でもしなさいよ」
「う、ううぅ。女の力じゃない・・・」
「こ の 野 郎」
「練習は終わりました。自主練する暇を削ってまで言いに来たんです!別れてください!」
「なんで上から目線なのよ・・・」
怒りを通り越して呆れの領域だ。この子お馬鹿さんなんだな。私が嫌いなのか牛島さんを好きすぎるのか、おそらくどっちもだろうな。きっと今ここで私が何を言っても彼には通じない。
あーあ、どうやって抜け出そうかな。
途方にくれ、ほとほと困りきった私の前がいきなり暗くなる。
「え?」
「何をしている」
「っ、牛島さん!」
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