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□赤葦
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厨二病+赤葦が気持ち悪いです
・なんか久しぶりに大好きだった先輩に会った設定
赤葦視点
ずっと、追いかけている人がいた。
その人はいつも俺のどんどん先を行く人で、何をやってもかなわかったけど、だからこそ悔しくて、必死に追いかけた。
木兎さんとはまた違う、俺の憧れの人。
***
「こんなところで会うことになるなんて、思っても見ませんでした」
「それはこっちのセリフよ、あんた生きてたんだ」
「はい、お陰様で」
「嫌味だっつーの!」
「知ってますよ」
知ってますよ。あなたがそういう人なのは。
忘れたことなんてない。
あなたから教わったこと。あなたが俺を暗い闇のどん底から引っ張りあげてくれたこと。
その理由も、俺達を裏切ったことも。
すべて、すべて・・・
「・・・もう、嫌なんです」
「は?」
「置いていかれるのも、逃げられるのも、あなたが俺の目の前からいなくなるのが、もう耐えられない」
「ちょ、赤葦?!」
ああ、まだ俺の名前、覚えててくれたんですね。
司馬先輩、司馬さん。
司馬
体中から抑えきれない衝動が自分のエネルギーとなって一気に放出されるのがわかる。
辺りに大きな爆音と爆風を撒き散らして、視界は一気に土煙に覆われてしまった。
それでも司馬さんが戸惑っていのがよく分かる。
傷つけられた足を叱咤して思いっきり彼女の方向に向けて飛び込んだ。
「こっちですよ」
「っ!」
「あれ、司馬さんもしかして弱くなりました?」
「このっ!」
突如目の前に現れる俺を予期していなかったらしい。驚いた顔なんて初めて見た。貴重だ。
勢いよく銃を突き出してくる司馬さんの腕のなんと華奢なことか。
彼女のしばらく使ってない動体視力なんて俺には遅すぎてスローモーションのように見える。
ゆっくりと折らないようにその手首を掴んで銃を取り上げる。
「っあ・・・」
抵抗できないようにもう片方の手も引っ張って後ろで一つにまとめる。彼女の両手首は俺の片手にすっぽり収まってしまう。
そのままバランスの崩れた彼女の体をクルリと反転させて後ろから包み込むように抱きしめた。
強く、強く、力を込めて。
「ぅ、ぁ・・・」
「はぁ…司馬さん。好きです」
やばいな俺、気持ち悪いな。
そう思っても彼女の体を抱きしめた瞬間、数年間分の思いがこらえきれず飛び出してくる。
たった1枚のボロ布に等しいタンクトップの隙間から覗く健康的な肌。
そっと肩口に顔を埋めれば「ひっ」と今までに聞いたこともないようなびっくりした、それでいて怯えたような声を出した。
「(なんだ今の・・・)」
可愛すぎるだろ。
彼女のことだ。怯えた訳では無いと思う。ただびっくりして思わず声が漏れてしまったとか、そこらへんの理由だとは思う。
でも俺は、彼女のそんな一声にやられて体を抱きしめる手にますます力を込めた。
「あ、あか、あし・・・いたい」
「・・・どうして、あの時俺を殺さなかったんですか」
気付けば絶対に聞くつもりは無かった疑問を口に出していた。
もし司馬さんに会えてもこれだけは聞かないようにしようと思っていた。真実を知りたくなかったから。
俺のことが本当にどうでもいいのかそれとも本当に大切なのか。
恐れてたんだ。
でも司馬さんに会ったらそんなこと全部吹っ飛んだ。
「・・・あんた、そんなこと気にしてたの」
「そんなことじゃありません。あなたの行動はいつも俺を悩ませる」
酷い人だ。
「・・・あの時のこと気にしてたら謝るわ」
「なんですかそれ。取ってつけたような言葉なんて、欲しくない」
「ぅ・・・ちょっ、待て待て赤葦!」
「待ちました。もう沢山待ったんです!」
俺の目の前から消えて何年経ったと思ってるんですか。俺はあれからあなたを待ち続けた。本当はすぐに飛び出してあなたの後について行きたかった。でもそれは俺自身、なにより他のみんなにとてつもない迷惑がかかると思ったから必死に耐えたんだ。
あなたはまた絶対に俺の目の前に現れると思ったから。
そしたらほら、当たった。
何年も待った先にあなたに会えた。
もう何処にも行って欲しくない。その思いを込めて肩上に埋めていた顔を擦り付けるように左右に動かす。嫌だ嫌だと首を振るように。
「それに俺、決めてたんス」
「は?なんなのいきなり」
「司馬さん、逃げ足早から次会ったらもうチャンスは無いだろうなって思ってたんで」
「(話が読み込めない・・・)」
なんとなく、司馬さんの鼓動の音が聞こえる。
高鳴る心臓の音で彼女が緊張していることが丸わかりだ。
「木兎さんも、あと音駒の黒尾さんも、みんな待ってます」
「!」
懐かしい言葉であり、もう聞きたくない言葉なのだろう。彼女の肩がビクリと揺れた。
「もう他の仲間は来ませんよ。烏野の連中は元々こっち側だったんで」
「それは、なんとなくだけど気付いてたわ」
流石だな。素直にそう思う。
だけどわかったところでもう彼女に逃げる術はない。
自分の心がやけに冷静になっていくのが分かる。
何故だろう、司馬さんがもう少しで手に入るからなのか。
「司馬さ・・・「あんたがどんなにあたしのこと好きでもね」・・・?」
なんだ、何を言うつもりなんだ。
司馬さんの強気な顔がこちらをゆっくりと振り返る。
顔筋に流れる汗が彼女に余裕などないことを教えてくれるのに。
目の前の生意気な瞳は全く揺るがない。
「あたしはもうあの人のものなの。あんたはあたしを手に入れることはできないのよ」
悪いわね、最後に小さく呟く。
見下すような、憐れむような冷たい笑み。
そんな言葉、あなた自身から聞きたくなかった。
俺に勝ち目がないなんてどうしてあなたが決めつけるんだ。
俺はあなたが欲しい。好きじゃ足りない。
あなた1人を独占したい。
それで嫌われるのも、軽蔑されるのだっていい。
でも・・・
「そいつには譲らない。そいつだけは許しません」
「あんたが譲らなくても許さなくても、あたしはそう思ってる」
「なら司馬さんのそんな想いは変えてあげます」
「どうかしら?そんな簡単に行くとは思えないけど」
「確かに、そうかもしれません」
ーーーーでもね、司馬さん。
挑発っていうのは自分に逃げる算段がある時にした方がいいですよ。
そうじゃないと、あなたが思っている以上にそいつの話はタブーだ。
俺だから良かったものの、黒尾さんや木兎さんに言ったら激昂しますよ。
「・・・けど今のは本当にダメだ」
「赤葦?」
「司馬さん、もう悪あがきはやめましょう。これからはちゃんと俺が面倒みます。そいつのことも忘れさせてやります。だから安心してください」
「だから!!!それが無理だってあたしは言って・・・!」
もう司馬さんの口からそんな話聞きたくない。
俺はこちらを睨みつける彼女の頬を撫で顎をしっかり押さえつけた。
間髪入れずに口付けをする。
「!!!」
「(こんな形でしたくなかった・・・)」
でもこれ以外にもう方法が思いつかなかったんです。
すみません。
でも、ありがとうございます。
彼女の勝気な瞳はとろんと緩まり、やがて長いまつ毛に覆われる。
その途端力が一気に抜けた体を俺は反射的に支え、気を失った彼女の顔を見つめた。
「綺麗だ・・・」
あなたが俺の元に戻ってきてくれて。本当に感謝しています。
愛しさを込めて額にキスを落とす。小さなリップ音が自分の耳に入ってきた時、ようやく俺はこの人を手に入れたと実感出来た。
横抱きにした彼女の体はとても軽い。
これから木兎さんと黒尾さんに会ったらもっと大変な目に合うかもしれないのに、かわいそうだ。
でも、まぁ、仕方ない。
「俺達から逃げ出したあなたが悪いんです。でも木兎さんと黒尾さんにいじめられたら俺が甘やかして上げますよ」
だから
おかえりなさい、司馬さん。
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修羅場すぎだろ…