黒と緋の鏡
□第一夜
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「力を、かしてほしいとどうされた」
紡は髪を隠していた布を解く。
「…!」
「白い…」
まるで雪のような髪に、光の加減で蒼に見える瞳。
「僕はある神社にお仕えしていて、巫を務めています。
この頃、悪しき妖気が社内に充満し僕たちだけではどうにもできなくなりました。
神社には巫女様も僕の半身もいるのです!
おねがいです!助けてくださいっ」
頭を下げる紡の声は震えていた。
その姿に心をうたれた晴明は紡の頭を優しく撫でた。
「力になれるかはわからんが全力を尽くしてみよう」
ぱぁあ!と明るくなる紡。
ほっぺを赤くさせて元気にお礼をつげた。
***
「昌浩や」
「なんですかじい様」
にこにこ笑っている紡を指差す。
「汚れをおとしてやってはくれまいか?あれでは心が休まるまい」
「あ、はい!いいですよ。
でも、亜季さんはーー」
「ちっと話したいことがあるから先に紡を休ませてあげなさい」
渋々と言った感じに立ち上がり紡の手を引く。
「汚れ落としちゃおうか」
「やだっ姉上と一緒がいい!」
「い、一緒はちょっと……」
紡の発言に火がつくように顔を赤くした昌浩。なんとも純情な子だと、亜季は笑いを耐える。
駄々をこねる紡に向き直って、
「これから晴明殿とお話があるの。いい子で待っててくれたら一緒に寝ようか」
「はいるっ!昌浩いくぞっ」
その言葉に元気よく立ち上がり、昌浩の腕を逆にひく。
「うわっまって!」
バダバダと騒がしくいなくなった2人を見送ると、なんともいえぬ静寂がまた広がった。