黒と緋の鏡
□第四夜
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「これは驚いたな。まだ意識があるのか」
「わ、たしは……お前の、ようなものに屈しないっ。こ、の社は渡さぬ……!!」
切れ切れになろうともしっかりとした意思を告げる久遠に男は感心した。ーー歴代の巫女の中でも優れてるというのは本当であったか、と。
「ーーいや、素晴らしいよ久遠。誇り高き風祀の巫女よ。先代や先々代の女たちとは違うな」
「せ、んだい?」
久遠の目が僅かに険しさを帯びる。なんのことだか知らないその態度に男はにんまりと笑む。
「そうだな。お前がもっと瘴気に呑まれるまで、少し昔話でもしようか」
そういうと男は久遠の頭側に腰を落ち着かせ、彼女の流れるような黒髪を梳くように撫でた。
ーーーこれは己しか知らぬこの神社に仕える巫女の話を。