黒と緋の鏡

□はじまりの夜
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ーーカラカラカラ…


「ふむ…」


闇が色濃く帳を落とし、妖達が跋扈する時間帯。
蝋燭の灯りに照らされながら、皺の深い老人は深くため息をついた。


この老人、平安の世に名を轟かせる稀代の大陰陽師 安倍晴明その人である。


「どうかしたか、晴明」

「んぅ?ちっとなぁ…」

誰もいない空間から青い髪をした青年が現れる。
顎に手をあてながら晴明は呟く。

「宵籃や」
「………………なんだ」

安倍晴明の配下、十二神将青龍は主の物言いに十分に間をとって答えた。
こういうときの晴明の命令にはろくなことがない。


「ちょっと昌浩のところに客人のようだ。迎えにいってはくれまいか?」


ほけほけと笑うその顔は無邪気に輝いていた。
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