黒と緋の鏡
□はじまりの夜
1ページ/8ページ
ーーカラカラカラ…
「ふむ…」
闇が色濃く帳を落とし、妖達が跋扈する時間帯。
蝋燭の灯りに照らされながら、皺の深い老人は深くため息をついた。
この老人、平安の世に名を轟かせる稀代の大陰陽師 安倍晴明その人である。
「どうかしたか、晴明」
「んぅ?ちっとなぁ…」
誰もいない空間から青い髪をした青年が現れる。
顎に手をあてながら晴明は呟く。
「宵籃や」
「………………なんだ」
安倍晴明の配下、十二神将青龍は主の物言いに十分に間をとって答えた。
こういうときの晴明の命令にはろくなことがない。
「ちょっと昌浩のところに客人のようだ。迎えにいってはくれまいか?」
ほけほけと笑うその顔は無邪気に輝いていた。