黒と緋の鏡
□第五夜
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安倍邸からでた亜季は寂れ廃れた祠の前にいた。
ここは紡たちが山から駆け下り、初めて昌浩たちと出会った沼の近くだ。
祠の前には雨でできたであろう水たまりがある。
水面を静かに見つめていた亜季はおもむろに手を突っ込んだ。
「…風祀の終焉…ね。
そんなことのために久遠を使うっていうの。」
亜季の後ろに護衛としてきていた青龍は訝しげに彼女をみつめた。
「(一体だれと話している?)」
亜季の髪の毛が風もないのに舞い上がる。仄かに青白い光は亜季の手を伝い水面に吸い込まれて行く。
冷たい波動が辺りにひろがる。
「!!」
青龍は目を見開いた。
廃れた祠に力が戻りつつある。
このような規格外のことはある意味異常事態であった。