小説

□愛しき鎖よ
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「気に食わないわ、その目が」



ごっ

松本の胸ぐらを掴み、強引に壁に抑え付ける。松本は至って動じていない様子であった。ただ、飄々と。


「お前なんか
いなくなればええっ!
消えてまえばええんや!!」



何や。何んでや。



何でやねん。


何で…。









「手が震えてるで?



浜田」








振り上げた拳。振り下ろせないと知りながら。

ほら。

吊り上がる口角。


お前はこんな俺を見て笑うんやな。
余裕綽々と。




「楽しいですか?松本さん」


嫌な汗と熱い脳。
拳を抉じ開け松本の頬に添え、慣れない敬語を口にする。

嗚呼怖くて恐くて

コワくて。


掻き毟りたい。その頬を。
抉り穿ってやりたい。その目を。

二度とそんな目で俺を見れないように。

やめてくれ。

やめてくれ。




「お前は何もできへん
俺に何もできへん
俺無しじゃ

何にもできへんねん

だってお前は」





嗚呼誰か。






「もう、やめてくれッ…」






剥き出しの主導権。

抱きしめて。助けて。
怖い。恐い。コワイ。
獅子の喉を舐める舌。
許して。認めて。
もっと。もっと。もっと。



引いて。引いて。引いて。
繋いだまま。
俺は縋り付く。
真っ赤な首輪。



どうしようもない。
愛してもうてんねん。
懇願する。許しを乞う。跪く。





「愛してんねん…松本」




涙を拭うその指は、

鎖で雁字搦め。
しゃぶりたいほど
愛おしい。

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