小説

□自閉
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遠くから足音が聞こえる。
君に出会った時から、
耳鳴りが止まない。
鉄格子の向こうから差す月光に、背を向ける。
足音が近付いてくる度、鼓動が高なった。

足音だけでも気が狂ってしまいそうなんだ。


「ッぁ…」


指先を伸ばし、熱く疼く場所に触れる。触れなければ、
ボクの身体は焦げてしまいそうになる。君に出会ってから、この感覚を知ったんだよ。
マカ。


「ッはぁ…ま…」


はやく。
はやく、会いたい。

君に。


「あ、ぁ、っ…ま…ッかぁ」


コツ…コツ…コツ。


コツ。



「起きてる?クロナ」



まだ幼さが残るマカの声。



ああ、好きだよマカ。


耳鳴りが止まない。
どうしようもなく、それは蛇の笑声に似ている。


『濡れてるな お前、正気か?』


知らなかったよ。マカ。
ここ弄くると、頭が
おかしくなるんだね。


マカ。


「寝てるよね…クロナ」



それは蛙の悲鳴だったのかもしれない。





それとも…。




「じゃあ、また明日
お休みなさい」





ボクを永遠に閉じ込めておいてよ、マカ。

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