小説

□金魚
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朝起きたら金魚が死んどった。
真っ赤な金魚やってん。
目が見えてへんかった、盲目の金魚や。
ものごっつい金魚鉢に入れて飼ってたんや。一匹やってん、せやから空き空きやったわ。
正直、なんも思わへんかった。
悲しい?とか、ちゃうねん。

なんやろな。


おい聞いとんのかい、


「まっつん」





横で寝そべって携帯をずっと弄んでる松本。浜田は溜息を吐くと、仕方なしに笑った。


「あー、、そうなん?へー」



「聞いてへんやろ」


「聞いとるがな」



「じゃあ何の話しか言うてみぃや」



松本の動きが止まる。そして暫く浜田を見つめていた。


「なんやねんな」





「んー、なんか可愛ええなぁって」



浜田の顔が一気に真っ赤になった。松本がニヤリと悪戯気に笑う。


「アホ」


「なんでやねん」



ぐい。 浜田の顎を強引に引き寄せキスをする。浜田が抗えば抗う程引きずり込まれた。



「んっ、んぁ」


唾液が零れ、糸を引く。火花が飛び散る様に、歯と歯をぶつかり合い呼吸を許さない。



話し変えるなや。



浜田は抵抗するのをやめ、松本に身を委ねた。呼吸も諦め、眩暈すらも狂おしい。











ーーほんまに真っ赤な金魚やってん。
見つけたときに一発で気に入ったんや。



ーーふーん




ーーほんで死んだって話や





ーーん




ーー死んだ金魚がどうしようもなく誰かに似てた












ーーそれはよかったやないの

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