小説

□なぁ。
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とある番組の収録が終わり、俺は帰ろうとエレベーターの前に立った。
ふと目を落とした場所に修理中の三文字があった。
しょうがなく俺は階段を使う事にした。
そして、階段を降りている最中の事だった。
とん、と背中を誰かが触れた。刹那、俺は真っ逆さまに落ちていった。階段から踊り場へ自由落下の如く。
落下直後、朦朧とする意識の中、
俺を笑いながら見下げている浜田の姿が、薄っすらと見えた。







全治三ヶ月の怪我を負った。
命に関わる怪我ではなく、片足の骨折で済んだ。
松葉杖無しで歩けるまでに一ヶ月かかった。それまでずっと退院は出来なかった。
無理を言って退院し、その次の日から早速番組収録だった。
足を引きずりながら収録現場に向かい、久しぶりに浜田と顔を合わせた。それはスタジオでの事だった。
浜田は台本を念入りチェックしていた。一瞬だけ目が合ったが、直ぐに逸らし台本へと再び目を向ける浜田。無表情のままだ。
俺も直ぐに目を逸らした。
あの時の事を聞く気にもなれなかった。
見間違えかもしれない。あの時は気が動転していたのだ。
でも、あれは確かに、
浜田だった気がしてならないのだ。

収録最中はいつも通り笑い合っていた。仕事には何も支障は生まれなかった。いつもより笑いがとれたような気さえした。


足が完全に完治し、その出来事すら忘れていた頃。
番組収録中、カットがかかった時だった。そのカットを境に昼食の時間になった。俺は収録現場のセット裏にて、食事をする事にした。
適当に座れる場所を見つけ、そこに腰をおろす。

そうして一息吐いた時だった。

何かが大きな音をたてて、割れる音がした。それは俺の脳天からした音だと認識した時には、

俺は気を失っていた。
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