長い蛇に締め付けられて、死ぬそうになる夢を見た。
く、苦しいよう…うぅ、ううぅぅ……
「うぅぅ〜〜〜〜〜…」
ぱちり。
起きてみるとそこには悩ましげな顔をして、力任せに私を絞め殺そうとしている金髪のイケメン、もとい鳴海先生がいた。
「…ん、…せんぱ…」
窓の外をみるとまだ日は登っていないようだ。
ぎゅうううう
「痛たたたたたたたたた…!」
死ぬっ死にますから!!!
バシン!
唯一自由になる手で思いっきり頭をたたいた。
――――――――
「いやぁ〜ごめんね♥」
「…もっ…絶対、鳴海先生っ…とは、一緒に寝ませんから…!」
ぜいぜいと弾む息を整えながら必死の攻防の末ようやく起きた鳴海先生をにらむ。
それにへらへらと困ったように笑う。反省してねェな、この人。
「もう!いったい何の夢みてたんですか、あんなに力任せに締め付けてっ」
「……」
とたんに顔を強張らせて固まってしまう。
それは一瞬のことで、すぐにニコニコといつもの調子を見せたけれど、私は見逃さなかった。そういえば、と思い出す。
『…ん、せんぱ…』
先生は確か寝言でそんなことを言っていなかっただろうか。だとしたらそれは、『先輩』ではないだろうかと思う。
…。
仕方がないな…、そう見当がついてしまえば私には怒るに怒れない。
そっと苦笑いを浮かべてもういいですよ、と言えば急に怒りがおさまったことに鳴海先生はむしろ困惑していた。
ところで、と話を切り替えてごまかす。
「もう二日間先生方のお世話になってしまっていますが、私は寮に入ったりしなくていいんですか?」
その言葉に鳴海先生はうーんとうなった。
まだ二日とはいえ、いつまでも教員の部屋に生徒が入り浸るのはやはりよくないことのように思う。
しかし
「まことちゃんの場合は特殊なケースだからねぇ、学園側もまだどうしたらいいのか悩んでいるみたいなんだ。アリスもわかっていないから寮の中にまで入れるのはためらっているみたいだね」
なんて言われても。
とりあえずアリスが分かるまで私は寮で過ごせないらしい。
(『アリスが分かるまで』、か…)
ちょっぴり胸が痛い。
いつまでだろうか。
いつまで私はここにいられるのだろうか。
アリスがない子が学園にいるのは問題になるだろう、
ぎゅっと手を握り締めて、顔を上げる。いつかの未来を案じたって仕方がない。
「そうですか、わかりました…。これからしばらくの間、お世話になります」
「はい。お願いされます♥」
にっこり笑って迎えてくれる。
それがちょっと嬉しかった。
でもしばらく鳴海先生の部屋はごめんだ。